暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使いへ到る道
Prelude
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てはいなかった。混乱しなくていいから助かるけど。
 これはマジで幼児逆行かな、とも思ったけれど、近所の様子は全然違うし、テレビに映る内容も覚えの無いものばかりだったことから、過去を繰り返しているのではないと判断できた。
 一体ここはどこなのか。なにより、俺はなぜこんな目に遭っているのか。俺の身に何が起こったのか。疑問は尽きない。
 けれど、俺にはそんなことがどうでもよく、ほんの些細なことに思えるほどの、生前に残した大きな後悔があった。それを思うだけで身を斬られる様に辛く、目からは涙が溢れて来るほどだった。
 本当に、本当に、悔しかった。心残りだった。死んでも死に切れなかった。
 俺は。俺は。俺は。
 俺は―――

 ―――童貞のまま死んでしまったんだッッッ!!!!

 ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!
 くそっ、なんで、どうしてこんなことになってしまったんだ!こんな最悪のバッドエンドにたどり着くなんて!回避する方法はいくらでもあったんじゃないか!?
 は?彼女がいただろ?だから言ったじゃねえか、清く正しい男女交際だって。そんなことするわけねえじゃん。休日ちょっと一緒に出かけてあちこち見て回ってそのままさよならする程度だったんだよ!キスすらしてないんだよ!
 そのことに気づいたとき、俺は深い絶望に囚われた。泣きもせず、喚きもせず、ただただ絶望するだけ。目に映る全てが灰色に見え、聞こえる全ての音が濁って聞こえた。
 でもある日気づいたんだ。確かに俺は童貞のまま死んだ。でも、また再び生きることができた。以前とは違う。今度は童貞のまま死ぬのがどれだけ辛いかを知っているんだ、と。
 今俺は五歳。前の人生は死んだのでチャラにするとして、魔法使いになるまで残り二十五年。
 そうだ。今度こそ俺はやり遂げてみせる。そのためなら如何なる努力も惜しまない。

 俺は、今度こそ童貞を卒業してみせる!

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