第三話 日々その二
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「楽しんできて。私は家にいるから」
「外には出ないのか」
「今買って来たゲームしてるのよ」
にこりと笑って兄に述べたのだった。
「だから。別にね」
「そうか。ならいいが」
「そういえばお兄ちゃん最近ゲームしてる?」
「一応はな」
静かに妹に答える。
「やってはいる」
「そうなの。だったらいいけれど」
「しかし御前がやるようなゲームはしないな」
「まあそれは当然ね」
こう言われても別に驚くことはしない妹だった。
「だってお兄ちゃん男じゃない」
「ああ」
「私は女の子、しかも中学生」
自分のところはかなり強調していた。
「違いがあるのも当然よ。同じだったらかえって怖いわ」
「それもそうだ」
「とにかく。まあ楽しんできて」
また兄に告げた。
「お母さんと二人で家にいるからね」
「戸締りは忘れるなよ」
「安心して、ちゃんと部屋に金属バット置いてあるから」
これは冗談ではない。本当のことだ。母親が何かあった時にとわざわざその金属バットを買って彼女に与えたのである。母親も常にそういうものを持っていたりする。
「大丈夫よ」
「おかしな奴が来ても一撃か」
「そんなの来たら本当に容赦しないから」
随分と気が強い一面があるようである。
「安心してね」
「わかった。では安心して」
「言ってらっしゃい」
こうして彼はサイドカーで街に出た。街に出るとさらに無口になりただサイドカーを走らせるだけだった。周りもこれと言って見ず静かなものだ。その彼は駅前のあるビルの前でサイドカーを止めその中に入るのだった。そこは一軒の喫茶店であった。
「いらっしゃい」
「ああ」
「あっ、暫くぶりだね」
口髭を生やした中年の男がカウンターから声をかけてきた。赤いベストに黒い蝶ネクタイの洒落た出で立ちで黒い髪を奇麗にオールバックにしている。その彼が一見するとバーにも似た茶色い木造の店の中で彼に声をかけたのである。気さくな声で。
「昼に来るのは」
「そうだったか」
「そういえば夜もこの数日見なかったね」
「気が乗らなかった」
こう答えつつカウンターに座るのだった。それだけで木の匂いがするようだ。
「だからだ。悪かったな」
「またそれはどうして」
「色々とあった」
髑髏天使のことを出すことはなかった。これはあくまで彼自身、そして博士と妖怪達だけしか知らないことだった。それ以上の誰にも言うつもりはなかったのだ。
「だからだ。済まなかった」
「まあ毎日来て欲しいけれどね」
笑って語るマスターであった。
「仕方ないか。誰にだって事情があるからね」
「そうか」
「そういうものさ。さて」
ここまで話したうえでまた牧村に声をかけてきた。
「いつものやつかな、昼のいつもの」
「ああ、それを
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