第二話 天使その二十
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「それならばどう来るか。前か後ろからだと思った」
「何故後ろだとわかった?それで」
「貴様は俺を侮ってはいなかった。だからだ」
「それもわかっていたか」
「貴様の口調はそれだった。俺を敵視こそすれ侮っていたものではなかった」
このことを見抜いたうえでの反転した攻撃だったのだ。それを見抜いた髑髏天使の鋭さこそ見事と言うべきものであった。
「だからだ。正面から来るのではなく後ろからだとな」
「そういうことだったか」
「一瞬遅れていれば死んだのは俺だった」
緑の血が彼の周りにまで漂ってきた。彼はそれを見つつまた半漁人に言うのだった。
「危ないところだった」
「我を褒めるつもりか」
「いや」
「違うというのか」
「俺もまた貴様を侮っていないだけだ」
これが髑髏天使の返答だった。
「ただそれだけだ」
「そうか。貴様はそうなのだな
「何かおかしなところでもあるか?」
「いや」
そうではない。これもはっきりと髑髏天使に述べるのだった。
「見事だ。戦士に相応しい」
「俺が戦士か」
「そうだ、戦士だ」
半漁人はまた彼を天使ではなく戦士だと言ってみせるのだった。あえてという感じで。
「貴様はな。その天使に最後に言っておこう」
「末期の言葉か」
「そうだ。貴様はこれから次々に狙われる」
緑の己の血の中で語る。
「我だけでなくな。そして」
「そして?」
「貴様を狙わずともただ殺戮だけを望む者もいる」
「魔物だからか」
「説明は不要だということだな」
「それはおおよそわかる」
髑髏天使も既に察していることだった。魔物の本質というものが人のそれとは全く違ったものであるということを。ただ人を殺し喰らう存在のことはもう聞いているのだ。昔話で。
「だからそれはいい」
「そうか。その連中とも闘うことになるだろう」
「俺が望まずともか」
「貴様が」
死の間際の為言葉が少し止まった。
「望むと望まずに関わらずだ。それが髑髏天使の運命だからだ」
「そうか」
「我が言うことはここまでだ」
これが最後の言葉であった。
「ではな、さらばだ戦士よ」
そして紅蓮の炎となって姿を消すのだった。水中にその人型の紅い炎が沸き起こる。そうして彼は消えたのだった。それを見届けた髑髏天使はその炎が消えると背を向け岸辺にあがった。岸辺に戻るとまずは本来の姿、人間である牧村来期の姿になるのであった。
「闘うのが運命というのなら」
振り返って河を見つつ呟く。先程まで戦場だったその河を。
「闘う。何時までもな」
こう言い残してサイドカーに乗り自宅に帰るのだった。闘いが闘いを呼びそれが彼の決意をさらに固いものにさせていくのであった。
第二話 完
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