第二話 天使その十九
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「貴様には悪いがな」
「負け惜しみか」
「魔物は負け惜しみを言うことはない」
だが彼はこう反論するのだった。
「貴様にとっては悪いだろうがな」
「そうか」
髑髏天使にとってはそれを聞いても動じるところのないことだった。
「ならそれでいい」
「それ以上は聞かないのか」
「俺には興味のないことだ」
こうも答える髑髏天使だった。
「貴様がそう言うのならな」
「そうか。それではだ」
半漁人の身体に力が入った。そして。
「外させてもらうぞ」
「むっ!?」
髑髏天使の手をその爪で突き刺すのだった。それによりそれまで己の首を絞めていたその手の力を弱めさせたのであった。これが彼の狙いであった。
その瞬間に彼は髑髏天使から離れた。そうして再び間合いを取ったのだった。
「これでよし」
「逃げたか」
「何度も言うが我は半漁人だ」
このことをまた髑髏天使に言ってみせた。
「水の中での戦いならば誰にも敗れはしない」
「水の中ならか」
「貴様は髑髏天使だ」
髑髏天使であるということもまた言ってみせた。
「水の中での戦いは少なくとも我に劣る筈だ」
「貴様よりもか」
「思ったよりもやるようだがな」
それは認める半漁人であった。
「だがそれでもだ」
「貴様よりは劣るというのか」
「そろそろ疲れが出て来ている筈だ」
今の半漁人の目は冷静なものになっていた。クールですらある。
「違うか」
「違うがな」
「強がりはいい」
今度は言葉に冷徹な読みが入ってきていた。
「動きが微かに遅くなってきているからな」
「ほう」
「それが何よりの証拠だ。しかし我はだ」
「疲れていないというのだな」
「その通り。今こそ貴様を倒す時」
その言葉と共に姿を消すのだった。
「消えた」
「安心しろ。我は誇り高き半漁人」
声だけが水中に聞こえる。
「苦しませることはないからな」
「一撃ということか」
「心臓だ」
また半漁人の声だけが聞こえてくる。
「貴様の心臓を一撃で貫く。覚悟しろ」
「心臓か」
髑髏天使は今の半漁人の言葉を聞いて髑髏の奥の目をピクリと動かした。その目は人のものだが異形の顔がそれをそうではないかのように見せている。
「そうだ、心臓だ」
半漁人はまた言ってきた。
「貴様の心臓を貫いてやる。それで終わりだ」
「そうか、心臓か」
髑髏天使はその言葉にまた反応するのだった。
「俺の心臓を貫くのか」
「その通りだ。それではだ」
相変わらず姿は見えない。どうやら髑髏天使の死角に入りそこから語っているようだ。方角がわからないのは彼が常に動いているのと水中なので音の反響が地上のそれとは違うせいだった。
「死ね」
何かが動いた。水中での動きが何処かではじまるのが
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