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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#10 "life matters advice service"
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男の言葉を遮って親指で納屋を指す。
二人はもう一度顔を見合せた後、黙って大袋を運び込み始めた。他はどうでもいいが"シーツ"だけはな。
そうして二人の作業を監視していると、礼拝堂の方からアタシの頭痛を促進させる為に出されたような、ガラの悪い声がアタシの鼓膜にまで辿り着いた。
「ババア!とっとと開けやがれ、糞ババア!聞こえねえのか、おい!」
振り返って見てみればそこにいるのは予想通りレヴィの姿。
あの馬鹿が礼拝堂のドアを荒っぽく叩きながら吠えてやがった。その後ろにはお供についてきたのであろう、ロックだったか、最近この街にきた日本人が手持ち無沙汰な様子で突っ立ってる。
更に、その後ろには………来てるか。
ゼロが車のドアに寄り掛かって空なんぞ眺めてやがった。呑気なもんだ、全く。
溜め息をつきながら連中に向かって歩く。取り敢えずレヴィのやつは黙らせよう。これ以上騒がれたらアタシの頭がもたない。
ゼロは、どうするかな。さすがに今日のところはいいか。
どうせアタシはレヴィの相手だろうし、向こうも仕事で来てるわけだし。大した話は出来そうにない。
そう心中での計算を終えたアタシはまだ騒ぎ続けるレヴィに向けて一喝した。
「喧しいんだよ、レヴィ!そこは礼拝堂だ。アンタみたいな下品なのが入っていい場所 じゃないよ。シスターは宿舎だ。そっちへ回りな」
Side ロック
「随分久し振りだね。今日はお使いに来たのかい」
宿舎の中に設えられた応接室、だろうか。ゼロに連れられて教会の中を進み、俺と彼は教会の奥にある部屋に入っていった。室内の雰囲気は荘厳というよりは、静謐。取り立てて教会である事を印象づけてくれるような部屋ではなかった。
その部屋で僕らを出迎えてくれたのは、もうお婆さんと言っていい年齢のシスターだった。シスター・ヨランダと名乗った彼女は、話し振りも穏やかでその視線には慈愛の成分が多く含まれているように俺には感じられた。もっとも通常二つの目から注がれる筈のそれはただ片方からしか注がれてこなかったけれど。
テーブルから紅茶を持ち上げる際、そっと対面に座るシスターの顔を盗み見る。同じようにカップを持ち上げ、香りを楽しんでいる老婆の右目は眼帯に覆われていた。黒色をした眼帯は彼女の纏う修道服と相まって、不思議な迫力を醸しだしていた。
先程門前で出会った金髪のシスターも、堂々とホルスターをぶら下げていたが、さすがはこんな街で教会を維持しているシスター達だ。これくらいじゃないと務らないんだろうな。
「今日は二人で来たのかい? そういえばエダのやつもどうしたかね?」
テーブルにカップを音を立てずに置きながら、老シスターがゼロに話し掛ける。
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