第八話 芳香その九
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「どういうことだ?」
「神様は普段はおおっぴらに出て来たりわし等に対してあれしろだのこれしろだの言うことはないな」
「それはな」
牧村も神の存在を否定しない。否定しないが確かに家を出入りするように人の前に姿を現わすような存在でもないと思っている。だから今の博士の言葉に同意できるのである。
「その通りだ」
「じゃが。魔物の場合は違うのじゃよ」
「あれか」
「左様、あれじゃ」
今はあれ、というだけで話が進むのだった。それは牧村がその『神』をその目で見たからである。これは無言の、そして無二の説得力があった。
「簡単に出て来るじゃろ」
「そうだな」
「そういうことじゃ。奴等は魔物を操り指図をするのじゃよ」
「だから俺の前にも出て来るのだな」
「その通り。奴等を魔神という」
「魔神か」
「全部十二柱おるとされている」
博士はその数も知っていた。
「全部でな」
「十二か」
「文献には十二魔神と書かれておった」
文献にあったとも牧村に言うのだった。
「全部でな」
「十二の魔神か。そしてあの二人は」
「そのうちでも中心人物じゃよ。しかしのう」
「しかし?」
「連中はずっと封印されておったのじゃがな」
首を捻って言う博士だった。
「ずっとな。それが出て来るとはな」
「前の髑髏天使の時には出て来なかったのか」
「前どころではない」
五十年前という単位ではないと。こう牧村に告げるのだった。
「それこそじゃ。何千年とらしいのう」
「何千年か」
「文献によってその辺りはまちまちじゃ」
博士はここで本棚の方を振り向く。どうやらあそこにその文献があるらしい。何しろその蔵書はどれだけあるかわからずそのうえ様々なものがあるので博士や妖怪達以外が見ても容易にはわからないのだ。そうした本ばかりが置かれている、そんな本棚なのだ。
「まだはっきりとはわからん」
「そうなのか」
「そこは済まんな。しかしじゃ」
博士はそれでも言葉を続ける。
「今出て来るとはのう」
「そこがわからないのか」
「じゃから。何千年じゃぞ」
このことを強調する博士だった。
「何千年も封印されておったのが出て来たのじゃ。何故かのう」
「封印も永遠ではないだろう」
牧村は静かに分析してこう述べた。
「永遠に続くものはないのだからな」
「そういうことかのう。封印が弱まってか」
「そういうことだと思う。だが奴等は全部で十二いるのか」
「そうじゃ、十二じゃ」
数は確かであった。博士もその数ははっきりと言う。牧村はその数をしっかりと頭の中とその心の底に刻み込むのだった。まるで鋭いナイフで木に刻むように。
「十二おるからのう」
「まずは二人か」
「気をつけるようにな」
語る博士の目が剣呑なものになる。
「
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