最終話 日常その十一
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「だからお邪魔しました」
「来たか」
牧村は彼等を見て言った。
そうしてだ。彼はまた魔神達、今は人間の姿の彼等に話した。
「ならだ」
「ザッハトルテだよね」
子供が話す。
「それだよね」
「食うな」
「勿論だよ」
返答は決まっていた。これしかなかった。
「たっぷりと貰うからね」
「安心しろ。量はある」
「あるんだ」
「正直作り過ぎた位だ」
見ればだ。ザッハトルテは一つではなかった。
実際に幾つもある。そのザッハトルテを前にしてだ。
牧村はだ。また魔神達に話した。
「好きなだけ食え」
「わかった。それならな」
「そうさせてもらう」
魔神達はそれぞれの席を見つけてそこに座った。そうしてだ。
そこに座ってからだ。彼等は今度は妖怪達に話すのだった。
「まさか同席になるとはな」
「思いも寄らなかった」
「久し振りだな」
共にいるようになるのもだ。そうだというのだ。
「こうして共に過ごすというのも」
「別れて。随分と経つけれど」
「それでもね」
「こうしてまた一緒になる」
「不思議な話ですね」
こう妖怪達に話す。そしてだ。
妖怪達もだ。複雑な顔になってだ。こう魔神達に話した。
「何か嘘みたいだよね」
「ついこの前まで完全に別の存在になっていたのに」
「それが今こうして一緒にいるなんてね」
「おかしな話っていうか」
「妙に納得できるしね」
「そうなってるね」
妖怪達はこんなことを口々に言う。しかしだ。
彼等はだ。いぶかしみながらも話すのであった。
「けれど落ち着くね」
「元の鞘に戻ってね」
「まさにそんな感じだね」
「本当にね」
「それでいいのじゃよ」
博士も言う。牧村がザッハトルテを切るのを見ながらだ。
「楽しめばいいのじゃよ」
「楽しめばいいんだ」
「それならそれでなんだ」
「それでいいんだね」
「何でも楽しめば」
「そうじゃ。皆食べることも遊ぶことも楽しめばじゃ」
それでいいとだ。博士は妖怪達だけでなく魔神達にも話す。
その話をしてだ。牧村を見た。
牧村も博士の目に気付いてだ。こんなことを言うのであった。
「では俺はこれからはか」
「そうじゃ。楽しむことじゃ」
そうせよというのだ。
「この日常の生活をな」
「日常。いい言葉だな」
博士のその言葉をだ。噛み締める様にして呟いた。
「聞くだけで落ち着く言葉だ」
「そうじゃろう。それではじゃ」
「切れた」
ザッハトルテがだ。全てだというのだ。
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