第六十話 最終その十七
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「それ以外のことはな」
「話はわかりましたが」
小男はその言葉は聞きはした。だが、だった。
「しかしそれは喫茶店をやるうえでは」
「致命傷じゃねえのか?」
ロッカーもそのことには他人事ながら危惧する言葉で応えた。
「ちょっとな」
「だから俺は作ることに専念する」
牧村自身こう言いはした。
「それだけだ」
「そうじゃな。あんたは店には出ん方がいい」
老婆もそれはそうするべきだというのであった。
「さもなければ店を潰すぞ」
「店をか」
「流石にそれはしたくないな」
男も今は牧村に親身に話す。彼寄りになっている。
「店を潰すことは」
「俺は喫茶店が好きだ」
牧村もその考えはないというのだ。流石にだ。
「潰すことなぞ論外だ」
「では。接客はしないことね」
女もそれは止めておけというのだった。
「本当に潰すことになるわ」
「そうだな。あんたのコーヒーは飲みたいが」
仙人にしてもだ。そのことについては同じ意見だった。
「それでもな。接客は受けたくはない」
「君無愛想にも程があるよ」
何故牧村の接客は駄目なのか。子供は率直に言ってみせた。
「何処の東京の寿司屋なんだよ」
「東京の寿司屋は好きではありません」
老人はその東京の寿司屋を否定していた。
「東京ではあれがいいのですか」
「いいらしいな」
死神も話す。東京の寿司屋をだ。
「東京ではあれが」
「理解できないね」
目玉もであった。東京の寿司屋については否定的だった。
「威張って無愛想でさ。一見さんお断りってね」
「大阪ならばあれで潰れる」
死神も言い切った。
「味以前だ」
「安くても潰れるよ」
子供はまた指摘した。
「あんな寿司屋はね」
「俺はそうした寿司屋は知らない」
牧村もだった。そうした寿司屋はだというのだ。
「入ったことがない」
「東京自体に行かれたことはありませんね」
「東京か」
「はい、おありですか?」
「あることはあるが」
こう老人に話す。
「しかしだ」
「それでもですね」
「寿司屋に入ったことはない」
そのだ。寿司屋にはだというのだ。
「うどんを食べて東京の飯は合わないと思った」
「ああ、あれじゃな」
老婆もその東京のうどんについて話した。
「あの墨みたいなつゆのうどんじゃな」
「あれは食えない」
牧村は一言で否定した。
「俺には合わない」
「美味いまずい以前の問題なんだね」
「そうだ。合わない」
子供にも一言であった。
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