第八話 芳香その六
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た」
「それが京都の味なんだよ」
また誇らしげに言う父だった。
「後でな。ほのかに来るものだ」
「香りか」
「来期、教えておくわね」
母もまた自分の夫と同じ笑みになって彼に言ってきた。
「京都の料理はね。味だけを楽しむものじゃないのよ」
「味だけでも」
「香りもなのよ」
彼女もまたこのことを彼に教えてきた。
「香りも。味わうものなのよ」
「そうだったのか」
「そういうこと。それはわかったかしら」
「一応は」
答えはするがそれでもいつもの彼なのは変わらない。
「わかった」
「本当かしら」
「多分そうじゃないのか?」
どうも今一つそうは見えない息子を見て首を右に傾げた妻に対して言ってきた夫だった。
「来期は昔からいつもこうじゃないか」
「それもわかっているけれど」
わかっているが、というやつであった。
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