第五十九話 精神その十九
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「女の子はスタイルを気にしますから」
「それでじゃ。あまり太っていなくとも」
「周りに少し言われたりして」
「それで極端なダイエットに走る」
よくある話だった。残念なことに。
「心身共に痩せ衰えてしまうのじゃ」
「そうした人を何とかするのもまた」
「わしの務めの一つじゃ」
「そうですね。本当に」
「全くじゃ。困ったことにじゃ」
また言う博士だった。
「それで何人もぼろぼろになった娘を見てきた」
「よくあるよね、人間の世界じゃ」
「そうよね、本当にね」
「それで無茶に痩せて」
「かえって駄目になるよね」
「太り過ぎも痩せ過ぎもよくないのじゃ」
博士はまた話した。
「どうも痩せれば痩せる程よいという娘が多いようじゃ」
「そうした娘ってがりがりなんだよね」
「風が当たっても痛がるみたいになって」
「もう死ぬ様な状況になって」
「それでもまだ食べないんだから」
妖怪達もであった。暗い顔で話す。
「それじゃあまずいよね」
「やっぱり牧村さんみたいなのがいいんだね」
「身体を動かしてそれで食べる」
「それがいいんだね」
「運動をして食べていく」
「それが一番なんだね」
「その通りじゃ」
博士もだ。それが最もいいというのだった。
「そうなのじゃがな」
「それをしないで食べないで」
「それで痩せるのは駄目だね」
「危険なんだね」
「そうじゃ。それをわかることじゃ」
博士はこう妖怪達に話す。
「痩せたければ食べることじゃ」
「食べるのは止めるべきじゃない」
「そういうことだね」
「そうじゃ。食べることじゃ」
また言う博士だった。
「絶対にじゃ」
「ですよね。食べないと駄目ですよね」
ろく子も博士のその言葉に頷いて述べる。その長い首が動く。
「さもないと破滅しますよ」
「痩せて奇麗になるか」
博士はそのことも話す。
「そうとも限らん」
「かえってよくなくなりますね」
「痩せたその極限にあるのは」
「はい」
ろく子は博士に応えて話す。
「骸骨じゃ」
「そうです。本当にそれです」
「骸骨になれば一緒じゃ」
博士は悲しい顔で述べた。
「太り過ぎ以前の問題じゃ」
「本当に痩せ過ぎも太り過ぎも同じですね」
「同じじゃ。全くな」
こんな話をしてだった。彼等はだ。
カルピスを牧村に残してだ。彼等は彼等でカルピスを楽しむのだった。そうして彼の帰りを待っていた。帰還を楽しみに待ちながら。
第五十九話 完
2011・5・13
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