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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#09 "abnormal"
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てやがるけど、そこまで言われてまだ気付かねえのか。この街で一、二を争う勢力つったら、普通気付くだろ。

けっ、まあいいや。
テメエがどうなろうがアタシの知ったこっちゃねえよ。
いい加減噛み潰しちまったタバコを捨てて、新しいのに火い点けるか。
前の男どもを意識の外に追いやって、アタシはただ煙草の味を楽しむ事とする。
車は順調に目的地に向かって走り続けていた………

















Side ゼロ

『ブーゲンビリア貿易』
サータナム・ストリートの片隅に立つ古式ゆかしい洋風建築のビル。そこに表札を掲げる この会社の正体がロシアンマフィア 『ホテル・モスクワ』のタイ支部である事はロアナプラの住人なら大概は知っている。
そしてその頭目であるバラライカ。通称火傷顔(フライフェイス)の顔と名を知らないものも、まあ居ないだろう。
ビル内に設えられた彼女の執務室には、今までも数えるほどしか訪れた事はないが、いつ来ても緊張したものだ。
部屋の主の趣味なのか、別の意図があるのかは知らんが、極力照明を落とされた室内は窓こそあれど、常に深海の底にでもいるかのような重苦しさを来訪者に感じさせる。
出来うることなら立ち寄りたくはない場所だ、特に最近はな。
バラライカから熱い注目の視線を浴びている身としては執務室どころか、ビルの前すら通りたくないところだ。

そう。普段ならな。

「姉御、姉御! あれ、指どころか拳ごといれてねえか?大丈夫なのか、あんなことして」

「大丈夫なんじゃないの。別に死にゃしないわよ」

「うわ!おい、ロックも見てみろよ!アイツあんなん使ってるぞ」

「レヴィ……そんなにはしゃがなくても…」

俺は床を向いて小さく溜め息をつく。バラライカには気付かれないように。
さすがに、かの女傑もこの状況で同情めいた視線を向けられたくはないだろう。万が一笑い出したりでもしたらいよいよ生きては帰してくれないだろうな。

門番に来訪の意図を告げ、執務室まで通された俺達を出迎えてくれたのは中々味わい深い光景だった。何十インチあるかも分からないような巨大モニターとそれを眺めるバラライカ。
モニターの中では白人の男女がベッドの上、一糸纏わぬ姿で交わっている。市場に出回る商品のチェックらしいが、まあご苦労な事だ。
別にバラライカ自らがやる事でもないと思うのだが、単純作業過ぎて部下にやらせるのもどうかと思ったのだろう。基本的に『ホテル・モスクワ』の人員は優秀なのが揃ってる。バラライカの下で働くのだからな。
直属の遊撃隊(ヴィソトニキ)でなくても無能な部下など生きてはゆけないだろう。ましてロアナプラ(この街)じゃあな。
しかし、今回は完全にそれが裏目に出たな。使い走り
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