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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#09 "abnormal"
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けば、日本のクラブともそれほど違わないか。
と言っても高級クラブというよりは、もっと庶民的な方かな。天井からはミラー・ボールが下がってるし、BGMもアップテンポなものだ。
ああ、あれは日本にはないな。ポール・ダンスってやつか。映画なんかで良く見るけど本当にやるんだな、ああいうの。
良く観たらここにいる女の人達って、人種も何もバラバラだな。髪の色も金髪、赤毛、黒髪、茶色……金髪でも明るいのもあれば暗い色もある。さすがに日本人はいないみたいだけど。
「熱心に見学してるな。結構な事だ」
唐突に掛けられた言葉に慌てて横に立つゼロに視線を戻す。彼はまだ話を続けてる(ローワンさんはまだ、自身の構想について熱く語り続けていた)二人を見たまま、俺に語りかける。
「ロック、お前はこの街で色んなものを見てきただろ。見たいものも、見たくないものもな」
語り続ける彼の横顔を見ながら思い出す。この街に来てから見てきたものを。
船上で戦うレヴィの姿。熱く語ってくれたゼロの顔。喜ぶガルシア君とロベルタの涙。カウンターの上で倒れた死体。撃たれて吹っ飛んだレヴィ。………自分に向けられた銃口も。
「これからもお前は見ることになる。とびっきりデカい糞みたいな世界の現実って奴をな。この街にいる限りはそれは避けられない。
逃げるのは簡単だ。そしてそれは卑怯者のする事でも、臆病者のする事でもない。賢い"マトモ"な人間のする事だ。
勘違いするなよ。別にお前を追い出そうというんじゃあない。以前にもこう言った。これからもこう言うだろう。だから俺は今この時もこう言わせてもらう。ロック、全ては」
「お前が決めろ。自分で考えて、自分で決めろ」
最後の台詞を言わせる前に、彼の横顔に言葉を投げ掛けた。自分の言葉を。今まで散々自分に投げ掛けられた言葉を。
ゼロの横顔から目が離せなかった。コイツが何を言わんとしているのか。何を伝えようとしているのか。その鉄面皮から少しでも読み取ろうと。ゼロ、お前は………
「だぁぁぁぁぁぁ!! いい加減にしろよな、ローワン!アタシはやんねえって言ってんだろうが!
ゼロ!テメエも何突っ立ってやがんだよ! とっとと仕事の話済ましちまえ! アタシは車に戻ってるからな!」
店内に響き渡るような大きな声にローワンさん達の方を振り向く。
とうとうレヴィがキレたのか、大股で此方に向かって歩いてくる。慌てて後ずさると、俺とゼロの間を通って、店を出ていってしまった。呆然と見送る俺の背中側では、ゼロとローワンさんの会話が始まったようだ。
「またフラれちまったようだな、ローワン。あまり相棒を怒らせないでくれよ。その内ダッチの胃に穴が開いちまうぜ。
さて、頼まれてたものだがな。店用の酒、1500本。港湾局の五番倉庫に置いておいた」
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