第七話 九階その二十
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「うぐっ・・・・・・」
「心臓だな」
呻き声をあげたナックラ=ビーに対しての言葉だった。
「間違いなく。そうだな」
「その通りだ・・・・・・」
「俺の勝ちだ」
言いつつその剣を引き抜く。剣は赤黒い血で濡れ、また傷口からその血が溢れ出てきていた。それを観ても致命傷であることがわかる。
「そして御前の負けだ」
「この俺が・・・・・・」
「俺は負けはしない」
そしてこうナックラ=ビーに対して告げた。告げながら後ろに着地し翼を収める。普段の髑髏天使の姿に戻っての言葉であった。
「言った筈だ」
「それが理由か」
「そうだ。勝ったな」
言葉には何も悪びれるものがなかった。
「そういうことだ。わかったな」
「へっ、理由にはなっていないな」
ナックラ=ビーの血を吐きながらの言葉は悪態だった。
「だがな」
「だが。何だ」
「納得はしたぜ」
髑髏天使を見据えての言葉だった。
「よくな」
「そうか。なら言葉はもういらないな」
「俺はこれでおしまいだ」
身体を紅蓮の炎が包もうとしていた。それは今までの魔物達と同じく彼の形そのままであり彼はその中で炎と化して消えようとしていた。
「御前の力を手に入れて暴れたかったぜ」
「残念だがそれは不可能になった」
「全くだ。じゃあこれでな」
「心置きなく死ね」
最後にこうナックラ=ビーに対して告げた。
「悔いなくな」
「まあ悔いはあるがな。けれどそれももういいさ」
不思議と達観した言葉になっていた。
「そうして死ぬのもよくあることだからな。じゃあな」
彼も自分の死を受け入れた。そうして紅蓮の炎と化して消え去った。今度の闘いも髑髏天使の勝利に終わった。勝利を収めた彼は牧村の姿に戻りサイドカーで駐車場を出た。そこで入り口にあの女が立っていた。相変わらずライダースーツにヘルメットを被ったままであった。バイクはすぐ側に止めている。
「勝つなんてね」
「俺は負けはしない」
ヘルメットを脱ぐことなく女に返した。
「何があろうともな。どんな相手であろうともな」
「面白い言葉ね。戦士の言葉ね」
「戦士か」
「ええ、戦士よ」
あえて彼を人間とは呼ばないような言葉であった。
「その言葉はね」
「そうか」
「けれどまだね」
しかし不意にこうも言った女であった。
「まだね。階段を登りつめるのは」
「階段!?」
「天使の階段よ。まだ二階にいるだけよ」
「大天使のことか」
「そうよ。さらに登りなさい」
ヘルメットの奥の目を光らせつつ牧村に対して言ってきた。
「早くね」
「さらに上の天使になれということか」
「そうよ」
その言葉を認めてきた。
「その通りよ。わかったわね」
「それが貴様の望みか」
「少なくとも私は」
女の
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