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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#08 "let\'s go to excursion!"
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ターフリーク《オタク》だからまだ分かるけどな。一体どんな経験してきたんだ、コイツ?
「今回はそれをロックに適用しようというわけさ。知らない事は知らないままでいる方がいい 場合もあるが、知っておいた方がいい場合もあるだろう。特にロックの奴はちょっと危なっかしい ところがある。お前もそう思わないか?」
ああ、確かにな。目を細めて前に座ってる馬鹿のド頭を見る。
コイツは何にも分かっちゃいねえ。"ここ"がどういう場所か。"アタシら"がどういう人間か。コイツは全く分かっちゃいねえ。今もテメエの話をされてるってのに、ぼおっとしやがって。窓から外を見るわけでもなく、ただ前向いて大人しく座ったままだ。
はん!覇気のねえ野郎だ。
何となくイライラしてきたアタシの耳にゼロの声が再び届く。
「俺やお前が常に守ってやれれば、それが一番なんだがそういうわけにもいかんしな。 ロックにも成長してもらわなきゃいかん。行った先で色々と話を聞かせてもらえば有意義な時間になるだろう。一人で悶々と考え込むよりはな」
助手席のシート越しに見えるロックの肩が、微かに震えた。一人で悶々と、ねえ。
視線を前に座る新入りの日本人から外し、車の窓から流れていく街を眺める。
街はいつもと変わらねえ。薄汚れた建物にやたら派手な看板。厚化粧の女どもに群がる男たち。安酒の匂いに混じった腐ったドブの香り。ラチャダ・ストリートに入ったか。
って事は最初の目的地はローワンの店だな。
「ゼロ、この辺は坊やには刺激が強すぎないか。まだおしゃぶりが必要な坊やにはな」
「子供ってな、こっちが想像する以上に早く成長するものさ。でかすぎる服も成長すりゃ似合うようになる。
第一コイツはどうしたってこの街じゃ異質な存在だ。どうせどこに連れていっても場違いなら、どこでも連れていってやるさ。保護者同伴でな」
アタシの顔は外に向いたままだったから、ゼロがどんな顔してたかは分からない。もっとも運転席にいる以上はミラー越しにしか確認できねえけど。それにどうせいつもの無表情だろ。
短くなったタバコを人さし指と中指で挟み、窓から手を伸ばして放り捨てる。
………来るんじゃなかったかな、やっぱ。
「着いたぞ」
車は予想通りローワンの店の前で止まる。ゼロはドアを開けさっさと降りていく。ロックの奴も少し遅れて助手席のドアを開け、おずおずと降りていく。
ちっ、いちいちビビってんじゃねえよ。
アタシは勢いよくドアを開け、足下にあった安酒の瓶を思いきり蹴り飛ばす。
驚いてこちらを振り返るロックの後頭部を一発張り飛ばして店に向かい、そのまま振り向く事なく軟弱野郎に告げる。
「ぼおっとしてんな。とっとと入るぜ。ゼロが待ってる」
あの野郎、アタシに子守押し付けてさ
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