第五十六話 使長その九
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「それは」
「若奈ちゃんと付き合ってないとでも言うのか?」
「まさかと思うけれどそれはないよな」
「誰もそんな言葉信じないからな」
「それわかってるんだろうな」
「彼女だ」
それは確かだと答える牧村だった。
「確かにな。それはだ」
「俺達は彼女いないんだよ」
「残念だけれどな」
「そこが違うんだよ、御前と」
「その辺り格差社会なんだよ」
随分と懐かしい共産主義的な言葉も出て来ている。
「彼女がいるのといないのとじゃな」
「もう全然違うんだよ、わかってるのかよ」
「だからな。俺達だってな」
「彼女が欲しいんだよ」
「だからだよ」
それでだ。ろく子だというのである。
「ああした奇麗な人が彼女だとな」
「やっぱりいいんだよ」
「わかるか?そういうの」
「そこのところどうなんだよ」
「この世で一番奇麗というとだ」
そうした話にだ。牧村は何故か受け取った。
そしてであった。彼はこう言うのだった。
「やはりだ。それは」
「若奈ちゃんか?」
「そう言うのかよ」
「まさかと思うけれどな」
「そう思う」
実際にだ。そうだというのであった。
「俺はだ。そう思う」
「ううん、若奈ちゃんってな」
「そうだよな」
「奇麗っていうかな」
「ちょっと違うよな」
「可愛いだよな」
彼等の若奈への評価はこちらであった。可愛いというのである。
「小柄で童顔でな」
「垂れ目もいいしな」
「八重歯も見えるし」
「そういうの見てたらな」
「可愛いだよな」
「可愛いか」
牧村も彼等の言葉を聞いて述べた。
「皆はそう思うのか」
「ちょっと奇麗ってイメージないな」
「大人って感じしないからな」
「制服着たらそのまま高校生だろ」
「いや、中学生だろ」
「小学生でも通用しないか?」
小柄で童顔だからだ。どうしてもそう見えてしまうというのである。
この辺りが若奈の特徴であった。彼女はそうした風に見られているのである。
「六年かそれ位でな」
「そうかもな。女の人ってあの辺りで背が止まるしな」
「若奈ちゃんどう見たって小さいしな」
「それ考えたらな」
「やっぱり可愛いだよな」
「そうだよな」
またこう話す彼等だった。
「奇麗じゃないよ」
「御前には悪いけれどな」
「可愛いという感じだよ」
「そうか」
彼等のそうした言葉をだ。牧村はそのまま受けた。
そしてだ。それからこう話したのだった。
「可愛いか」
「あれっ、それでもいいのかよ」
「奇麗にはこだわらないんだな」
「そうなんだな」
「どちらも褒め言葉だ」
だからだ。いいという彼だった。
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