第二話 天使その一
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に来ているし何度も乗せているからだ。その度に大喜びではしゃぐ姿も見ているのだ。
「だからそれでいいんだな」
「お兄ちゃんのサイドカー凄く格好いいから」
これが彼女が牧村、自分の兄のサイドカーに乗りたがる理由だった。彼のサイドカーは彼女の大のお気に入りなのである。
「だから。それで来てくれたらね」
「わかった。じゃあ今すぐ行く」
「塾の入り口のところで待ってるから」
待ち合わせの場所は彼女の方から言ってきた。
「そこに来て。御願いね」
「ああ、わかった」
「それでね。お兄ちゃん」
ここで妹はまた言ってきた。
「今度は何だ?」
「何か声がおかしいけれど」
不意にといった感じでの言葉だった。だがこの言葉を聞いて牧村の心に動揺が走った。先程自分がなっていたあの異形の姿のことを思い出したからだ。
「どうしたの?」
「気のせいだろう」
その動揺を必死に覆い隠して妹に答えた。
「それはな。気のせいだ」
「気のせいなのね、私の」
「そうだ。俺は別に変わらない」
こうも言う。とにかく妹の疑念を消し去ろうと必死になっていた。
「何もな。だから安心しろ」
「風邪とかじゃなかったらいいけれど」
「体調管理には気をつけている」
これは事実だった。彼は健康管理には気を使っているのだ。その為か体調はいつもかなりいいのだ。
「だからそれはまずない」
「そうよね。お兄ちゃん風邪なんてひかないものね」
「わかったらこれでいいか」
これ以上話せば今度は何を感じられるかわからない。だから今はこれで電話を切ることにしたのであった。彼の危機からの逃れ方であった。
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