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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#07 "Philosopher passed un uneasy night "
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Side ロック

「………」

自分の部屋のベッドに寝転がりながら、天井を眺める。
ロアナプラで住んでる今の部屋は天井が高い。随分薄汚れてはいるのだけれど、そこはこの部屋で気に入ってる点だ。

日本にいた頃は押し潰されそうな気分ばかり味わっていた。狭いワンルームの上、天井もやたら低かった。
綺麗な部屋ではあったけど、いずれ引っ越す事を考えれば汚すわけにも傷付けるわけにもいかない。
よくもまあ我慢出来ていたものだと、我ながら感心してしまう。

今の部屋はダッチが紹介してくれたものだ。広さは男一人住むには充分。おまけに最初から傷付き汚れていたので、なんの気兼ねもいらない。虫が多いのには参ったけど、まあ良い部屋といっていい。

そう言えば………今どうなってんだろうな、あの部屋。
何となく思い返していた。今では記憶の片隅にしかない懐かしいとすら思えなくなってしまった自分の部屋の事を。
家具なんかは実家から持って来たもんだし、親父たちが持ち帰ったのかな。そういや次のボーナスが出たらテレビを買い換えようなんて思ってたっけ。
CDなんかどうしたんだろう?
結構枚数あったよなあ。アルバムだけしか買わなかったけど、それでもなあ。捨てられてないといいけど。

………いや捨ててくれてた方がいいかな。

何か見られてヤバいものあったっけ。
大したものは置いてないはずだけど、どうだったかな。もう思い出せないな………

「思い出せない、か」

照明はとっくに消してしまって真っ暗な部屋の中。誰に聞かせるでもなく天井に向かって呟く。
そんなに昔じゃないはずだけどな。あの部屋に住んでたのって。

「………」

生物は環境に順応する。
太陽の光すら届かない深海。厚い氷に覆われた極寒の地。乾燥した砂漠ですら、生物はどこでだって生きてゆく。
ヒトもまた、そうなのだろうか?
俺はこの街で生きてゆけるのだろうか。
こんな俺が。

力がないから生きていけない、と言うわけでもないのだろう。
実際聞いた限りでは、ベニーなんかは銃を撃った事なんて一度もないそうだ。人に向けては、だけど。
俺も銃を持つように言われた事はない。
中途半端な力なら持たない方がいい。そういう事なのかもしれない。そうじゃないのかもしれない。

『中途半端』と『本気』

俺が今ここにいる事は俺が決めた事だ。それは紛れもない真実だ。
だけど、これからは?明日は? 一ヶ月後は? 来年は? 十年後は?
俺はずっとこの街に居続けるのか?ラグーンのみんなと一緒に居続けるのか?

ダッチ。ベニー。ゼロ。そして、レヴィ。

レヴィ、か。
彼女の不敵な笑みが脳裡に浮かぶ。
今まで出会った人達の中で間違いなく一番強烈な印象を与えてくれた女だ。

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