第七話 九階その十四
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「時間。あるわよね」
「なくても作るだけだ」
「そう。面白い返事ね」
牧村の返答に興味を見せる声で返した。
「なくても作るの」
「そうだ。それで用は何だ」
「どうして貴方の横に来たのか」
今度は答えずにこう言ってきた。
「それを言えばわかるわよね」
「そうだな。それではだ」
「けれどここで闘うつもりはないわ」
「俺は構わないが」
「演出よ」
声に含ませてきていた笑みがさらに深いものになる。二人は道路で並行して走りながら言葉のやり取りを行っていた。互いに前を見たまま話をしている。
「これはね」
「そうか。演出か」
「女はね。場所にこだわるのよ」
牧村と並行して進みながらの言葉だった。
「そう、場所にね」
「では場所は何処だ」
前を見たまま素っ気無く女に問い返した。
「その場所は。俺は何処でもいいが」
「このまま先に進んで」
こう彼に言った。
「先にね」
「先にか」
「わかってもらえたかしら」
「それはわかった」
このことは簡単に受け入れた。
「しかしだ。貴様が相手ではない」
「それはまた今度ね」
やはりこう言ってこれは否定するのだった。
「いづれ。その時が来ればね」
「わかった。では相手は」
「このまま先に行けばわかるから」
あえて答えない女だった。
「このままね」
「ふん。あそこだな」
牧村の目にあるものが映ってきた。
「あの場所だな」
「前は屋上だったわね」
女は今度は牧村が髑髏天使として闘ったあの屋上について言及してきた。
「やまちちと。そうね」
「あの老人から聞いたのだな」
「その通りよ」
やはりそういうことであった。
「それはね。ちゃんと聞いているは」
「そういうことか」
「だから」
女はまた言ってきた。
「来てね」
「誘いを断る趣味はない」
女の誘いだからではなかった。
「それが俺の主義だ」
「いい主義を持っているのね」
「そうは思ったことはない」
「そうした無味乾燥さもそれはそれで味があるけれど」
「そうか。それでだ」
今の言葉には構わず女にまた問い返してきた。
「貴様も来るのか」
「私も?」
「そうか。貴様もか」
目はその場所にやっている。やはり言葉だけを女にかける。
「貴様も来るのか」
「私は行かないわ」
だがこう言ってそれは否定する女だった。
「立ち会うつもりもないわ」
「来ないのか」
「けれど。見ているから安心して」
しかしこうも言うのだった。
「貴方のことはね」
「魔物に見られていても嬉しくも何もないが」
「また随分と言うのね」
「気にしても気にしなくてもいい。これはな」
「あら、またその乾いた感じが」
「とりあえずわかった」
女が来ないことに対
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