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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#06 "fictional mask"
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事情があり生活がある。彼女も任務とは言えご苦労な事だ。

「相変わらずアンタはクールだね。ゼロ。
そこがまあ、アンタの良いとこなんだけどさ。ん?そういや、最近アンタんとこに変わり種の新入りが入ったんだってね。ソイツは今日は連れて来てないのかい? もしかしてあの万年生理不純女に欲求不満のはけ口にでも差し出したのぉ?」

エダが向きを変え、席に座り直しながら訊ねてくる。
しかしレヴィ本人がいてもいなくても、好き勝手に言うんだな。
ベニー。周りを見回さなくても、 レヴィは今夜は来てないさ。だから、安心して飲めよ。

「二人が一緒かどうかは知らんが、ロックは最近人生に悩んでるらしくてな。飲む気分ではないらしい」

俺もエダに向き直り、質問に答える。
さて、一体お忙しいシスターはこの俺に何の御用かな。
ただの暇潰しか、神の愛でも説きに来たか。お付き合いさせてもらうとするか。










Side エダ

今夜も『イエロー・フラッグ』にフラりと立ち寄ってみる。
酒場ってのは情報収集には最適だ。役にも立たない屑情報が殆んどだが、そもそも情報収集とはそういうものだ。何気無い酔っぱらいどもの一言の中に、思いも寄らない宝が隠されてる事もある。

私にとって情報は命綱だ。
こんな乱暴な街で生き抜いていく為には、 情報が何よりも大切だ。
"教会"の仕事でも"その他"の仕事でも、 情報はあるに越した事はない。
どこに火種があるかも分からないしな。

………以前の南米から来たメイドの時はまいった。
私はあくまでこの街の平穏を望んでいる。
例えマフィア同士の緊張感ある均衡の上に成り立っている危うい平穏だとしてもだ。
現状維持こそ望むところ。 余計な波風は御免被りたい。
幸い一日で治まったからいいようなものの、 あんな狂犬の存在は甚だ迷惑だ。 自分自身すら滅びても構わないと言うようなあんな連中は。

狂犬、か。

………さて、目の前にいる男はどうなんだろうな。

『ラグーン商会』

ロアナプラに於いては中立を貫いている構成人数五名の所謂(いわゆる)『運び屋』だ。
基本的には金の折り合いさえつけば、 どの勢力の仕事でも引き受ける。
『ホテル・モスクワ』とは友好的と表現して差し支えない関係だが、完全な従属関係にあるわけではないようだ。

たった五人という少数勢力たるラグーン商会が、こんな海賊達の楽園とも呼ばれる有象無象がひしめく街で中立の立場を貫けるのには幾つか理由がある。

『ホテル・モスクワ』と友好関係にある事も理由の一つだろうが、その持っている"実力"こそが大きな要因を占めている。

通称二挺拳銃(トゥーハンド)とも呼ばれる女拳銃遣い(ガンスリンガー)のレヴィ。

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