第七話 九階その十
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「そして空を飛べるようになった」
「空を?」
「サイドカーを使わなくても」
「サイドカーとはまた違う感じだった」
このことも語る。これは自分で飛んでみたからこそわかる言葉だった。それは確かに自分で空を飛んでいた。だからこそ全く違っていたのだ。
「それも完全にな」
「完全なんだ」
「じゃあどっちがいいとかじゃなくて」
「サイドカーは移動には確かにいい」
牧村は己が乗るサイドカーに対して述べた。
「そしてだ。スピードや衝撃力で一撃離脱を仕掛ける場合にだ」
「サイドカーなんだね」
「そうだ。そう思う」
「クールに分析してるね」
「またとてもね」
「あえてそう心掛けているだけだ」
酒や菓子で楽しくやっている妖怪達に対して語る。彼等はいつものように楽しく飲み食いをしている。何処からか出したそれ等をやっているのだ。
「それはな」
「ふうん。それだけなんだ」
「じゃあもっと聞くけれど」
「何だ?」
「大天使になってそれだけ?」
ひょうすべが彼に尋ねてきた。
「それだけなの?飛べるようになっただけ?」
「勿論それだけではない」
その問いにも静かに答えた。
「それだけではな」
「ふうん、じゃあどんな感じ?」
「どうなったの?それで」
「力が増してまた剣が手に入った」
「剣までなんだ」
「今度は左手に持ってサーベルを握っていた」
このことも妖怪達に対して語る。
「左手にな。それは主に守りに使った」
「攻防揃ったんだ」
「またかなり凄くなったね」
「自分で飛べるようになっただけじゃないし」
「そうだ。だからだ」
自分の左手を見ていた。
「俺の中で何かが変わった」
「強くなったんだよね」
「それってかなり凄いじゃない」
「しかし」
だがここで不意に顔を曇らせるのだった。
「何故そうなった」
「何故って?」
「そうなったって?」
「それがわからない」
こう妖怪達に答えたのだった。
「俺は大天使になった」
「うん」
「そして階級をあがっていくのだな」
「そうらしいね」
また妖怪達は答える。
「博士の言葉だと」
「まあ僕達は妖怪だからよくわからないけれど」
「その辺りは御免ね」
「いや、それはいい」
妖怪達の謝罪はよしとしたのだった。
「それはな。御前達には感謝している」
「感謝!?」
「僕達に!?」
牧村の謝礼には一斉に不思議な、何か聞いたこともないような言葉を耳にしたように驚いた顔を見せる妖怪達だった。それが牧村には不思議だった。
「何かおかしいか」
「おかしいっていうかね」
「ほら、僕達って妖怪じゃない」
「ああ」
「だから。人間にさ」
妖怪達は相変わらず飲み食いをしながら語っていく。
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