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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
chapter 02 : sister
#05 "a place of relaxation"
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言えばいいのか………
お前らはもっと凄い奴等なんだから、俺なんか頼るな。本気を出せ、本気で考えろ。そうすりゃ問題なんてすぐ解決できる。
そんな事を考えているような。だから簡単に救いの手を差し伸べない。敢えてそうしているような気がする。
いや、何の確証もないのだけれど。

「ベニー。お前にも聞いてみたかったんだがな」

不意に横から声が掛かる。
ゼロがカウンターにグラスを置いて、 此方を見ながら話し掛けてきていた。

「え、何?」

僕もグラスを置いて向き直る。

「質問は二つある。 お前はロックがここに居てもいいと思うか?」

ロックがここに居てもいいか?
思わず瞬きして彼の顔を見直す。
彼の顔はいつもながら真剣だ。
真剣な問い、というわけだ。

「ここにってのは、ラグーン商会(うち)にって事?」

ロアナプラ(この街)って事さ」

………この街、ロアナプラにか。

カウンターの上に両肘をつき、 顎を乗せて考え込む。

彼が何故今このタイミングで、そんな質問をしてきたか。そちらにも興味はあるけれど、 先ずは質問の答えを考えるとしようか。

良いか、悪いか。
シンプルにその二つを比べるなら、

「彼の事を考えれば良いわけないよね」

「………」

ロックは明るい世界の人間だ。
この街に住んでる僕が言うのもなんだけど、ロアナプラ(ここ)はマトモな人間が住む場所(とこ)じゃない。
いや、住むという言葉も間違いか。
ここはいつ崩壊したっておかしくない。かなり危ういバランスの上で成り立っている正に『魔窟』だ。
ここにいる人間達は、皆一時的に滞在してるだけ。いずれは違う場所へ旅立つ。
違う街へか、違う世界へか。程度の違いはあるけれど。
どちらにせよ永く居られる場所ではないし、居ていい場所でもない。
僕もいずれは去る事になるのだろう。いつになるかは分からないけれど。

「……ここは彼が居ていい場所じゃない。それは間違いないよ。でも何で急にそんな事を聞いたの?君にも分かってる事でしょ」

カウンターの中、マスターのバオはやや離れた場所でグラスを磨いていた、に視線を固定しながら彼に問い返す。
店内は変わらず喧騒に包まれてるけど、 カウンターには僕ら二人だけ。

ロアナプラに於ける有名人の一人であるゼロに、 意味もなく近寄ってくる連中は先ずいない。
レヴィと違って彼は何をするってわけでもないんだけど。

「………自分が知っている事、考えている事が必ずしも正解とは限らない。
俺は常に迷っている。昔からずっと、な。
だから時には他者の意見や考えを聞いてみたくなるのさ。
お前は最近変わってきただろ、ベニー。前のお前だったら話を聞こうなんて思わなかったよ。今の
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