第五十五話 兄と妹(前編)
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り器用でないところが」
「そうか」
「口下手ですよね、中佐も艦長も」
「否定はできないな」
言われてみればその通りである。アムロも頷くしかなかった。
「だとするとあの二人は俺やブライトの出る幕じゃない」
「ですね」
「ここは他の者に任せるとするか。おじさんは引っ込むとしよう」
「おじさんって」
「最近な。どうも皆俺やブライトを年寄り扱いするからな」
そう言いながら苦笑いを浮かべた。
「俺もブライトもまだ二十代なんだが。若さってやつは怖いな」
「クワトロ大尉もそんなこと仰ってましたね」
「あいつもか」
アムロはそれを聞くと目に感慨を宿らせた。
「そろそろ俺達も引退する時なのかもな」
「引退ってまだまだ現役じゃないですか」
「そういった意味じゃなくてな。ニュータイプとして」
「ニュータイプとして」
「俺もあいつも歳をとってきた。もう若い連中に任せてもいいかな」
「けれどこの戦いはアムロ中佐もクワトロ大尉も必要ですよ。皆本当に頼りにしてるんですから」
「問題はその後だ」
「その後」
「そうだ」
アムロはまた言った。
「この戦いが終わったら人類は新たな歩みをはじめなくちゃいけない。その役目は俺達じゃないんだ」
「それじゃあ」
「もっと若い者達がしなくちゃいけない。そうでないと人類はよくならない」
「できるでしょうか」
「できるか」
アムロは答えた。
「一年戦争も終わらせたしバルマー戦役も乗り越えたし未来も変えることができた。人間は確かに進歩している」
「進歩」
「俺は人間を信じている。きっとできるさ」
「そうなのですか」
「チェーン、君にもな」
「私にも」
「頼りにしているよ、何かとね」
「は、はい」
アムロにそう言われるとその顔を明るいものにさせた。頬も赤らめた。
「私、頑張ります」
「ああ、宜しく頼むよ」
「はい。それじゃあまずは」
「アイナを宜しくな」
「了解」
そして敬礼をしてアムロの前を去った。アイナもまた心配し、気遣ってくれる者達がいた。彼女も一人ではなかったのだ。
だが一人で悩む者もいた。人はそれぞれ悩みを抱えて生きている。だがその悩みは何時かは拭い、克服しなければならない。そうでなくては人は前に進めはしないのだから。
戦いに敗れたネオ=ジオンは防衛ラインを後退させていた。ハマーンはグワダンのモニターに映る自軍とロンド=ベルの陣を見据えながら思案に耽っていた。
「やはりやってくれるな、彼等は」
険のある声でそう言った。
「あの防衛ラインを易々と突破するとは。サハリン少将はどうしたか」
「脱出されました。そして今は後方で自軍の建て直しにあたられています」
「そうか、わかった」
彼女はその報告を聞いて頷いた。
「撤退したモ
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