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木の葉芽吹きて大樹為す
双葉時代・発足編<中編>
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もオレに君の一押しのお花を紹介してくれないだろうか? 妹のご機嫌伺いに欲しいんだが」

 ついでにウインクをしてみれば、少女の表情が一変する。

「あの!」
「うんうん」
「この花はですね、薔薇と言って普段は山奥に小さな物しか生えていないのですが、わたしの父さんが改良を重ねてこんなに綺麗な花になったんです!」

 やっぱり。この辺りでは見かけた事のない花だったから不思議に思っていたのだが、最近出てくるようになった花だったらしい。
 それにしてもこの花、前世の記憶に出てくる薔薇とそっくりだ。
 なんだか懐かしいな。他では見た事はないから余計にね。

「今のところ、赤と白しかなくて……。でも、とっても綺麗でしょう!?」
「うん、綺麗だよね。それに香りもいい。君のお父さんは腕がいいんだ」
「本当ですか!?」

 手にしていた薔薇を一本借りて、そっと匂いを吸い込む。
 馥郁たる甘い香りが鼻孔をくすぐった。

「それじゃあ、ここにある中で白い薔薇を半分もらえないだろうか?」
「白い薔薇、だけですか?」

 ちょっと不満そうな少女に、ふふふと笑う。
 少女の乱れた髪をそっと指で梳けば、少女がまたまた顔を赤く染めた。

「そ! 今日のところは白い薔薇を君が持ってきた分の半分。それと、赤い薔薇も一本貰おうかな?」

 振り乱された髪を手櫛で大雑把に梳いて、見苦しくない程度に整えてやる。
 そうしてから少女の手の中から取り上げた赤い薔薇に軽く手を加えて、そっとその耳元にさしてやった。
 うん、我ながらいい出来だ!

「あ、あの……! こ、こんなことしてもらっても」
「大丈夫だよ。暫くその格好で声掛けをしていなさい。お客さんの方から君の方へと寄ってくるからね」
「へ? ど、どういう意味ですか?」

 曖昧に笑って、少女の手に薔薇の代金を落とす。
 今は私が傍にいるせいで誰も寄ってこないが、君の周囲のお姉さん方が目の色を変えて、君の手の薔薇の花を見つめているんだぞ。

「お花ありがとう。また今度買いに来てもいいかい?」
「よ、喜んで!」

 白薔薇の花束を抱えたまま、踵を返す。
 そうして振り向いた先の人影を見て、目を見開く。
 それまで上機嫌だったのに、それが一気に下降するような気分に襲われた。

「――……相変わらずのようだな、千手の木遁使い」

 腕を組み、不機嫌そうに赤い目で私を睨んでくる黒髪の青年の姿に、昔の記憶が甦る。
 森の中で不可解だといわんばかりに私を睨む赤い目が、目の前の青年の物と一致した。

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