暁 〜小説投稿サイト〜
Nalesha
Neuf
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
はルパンの手を振り払った。後ろ手に壁に手をつき、垂れ下がった髪の間からルパンを見た。



「ナリョーシャ」



 ルパンは悲しそうに微笑んだ。



「きみを愛している。心から」



 聞きたくない!この男の台詞は、どれもこれも、本来わたしに向けられるようなものじゃない。他の女に言えば、喜びのあまり身を投げ出す者さえいるだろうに、どうしてこの男はわたしにばかり構うのか。



 本意でも、偽りでも、どっちだってどうでもいい。そんな綺麗な言葉、わたしは欲しいと願ったことすらない。反吐が出る。



「あんたを、殺してやる…」



 体に収まりきらない苛立ちをどうにもできないまま、わたしはぎりぎりと歯を噛みしめながら言った。



「あんたを、殺してやる!」



「いいよ、ナリョーシャ」



 ルパンはかすかに微笑んだまま、言った。寂しさと諦めがまぜこぜになった、そんな顔で。



「君がそれを望むなら」



 ルパンは懐に手を入れた。わたしは一瞬何が出てきてもいいように身を縮こまらせたが、取り出されたのは装飾も美しい綺麗な銀の短刀だった。やけに古い。



「これはきみのものだ。きっときみを守ってくれる」



 ルパンはわたしにそれを差し出した。わたしはルパンの本意がわからず動けない。



 ルパンが素早くわたしに近づいて、わたしの手を取ると短刀を持たせようとした。しまったと気づいた時には遅かった。ルパンはわたしの手を引いたまま、短刀を持たせることもなく、まじまじとわたしの治りかけの手を見た。その瞳が冷えていくのを、わたしはどうにもできずただ見ていた。



「…ナリョーシャ」



 わたしの名を呼ぶ声は恐ろしく静かだ。



「これは、誰に?」



 エルがルパンに見つかるような間抜けじゃないことを、わたしは願うしかなかった。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ