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故郷は青き星
第九話
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の自慢の料理を前にしても一向に食が進まず、時折ため息を漏らしては視線を部屋の中の何処でもない何処かへと向ける。。
 そんないつに無い兄の様子にウークは心配そうに、そして帰宅後も構ってもらえなかったベオシカとムアリは不満そうに見つめる。
 だがポアーチとユーシンは『ついに来たな』『ついに来たのね』と目で語り合った後、ポアーチが咳払いをしてからエルシャンに話しかける。
「食事の後、私の書斎に来なさい」
「えっ……うん、分かったよ」
 そう答えながらもエルシャンは、再びため息を漏らすのであった。


「エルシャン。ここはお前と私しか居ない。男同士だ腹を割って話をしよう」
「何を?」
 書斎に呼び出されて来てみれば、唐突に男同士だの腹を割ってだのと言われて、流石にエルシャンも夢と現の狭間から戻って来ない訳にはいかなかった。
「とぼけるな。正直に父さんに話してみろ」
 何時に無く強い口調でポアーチは息子に迫る。
「……何のこと?」
 エルシャンにとっては正直ウザイ。はっきり言って今はポアーチの相手をしている気分ではない。
「照れるな。誰だって経験する事だ。父さんだってお前の年頃にはそりゃあもう……いや私の話はいい。今はお前の話だ」
「だから一体何なの?」
 思わせぶりなポアーチの話に、エルシャンはそろそろ苛立ってきた。
「分からん奴だな。お前が惚れた相手のことだよ」
「惚れたって……やっぱり、これは惚れたってことなのかな?」
 一言でずばり確信を突かれたエルシャンは、やはり今自分の胸の中にあるのは恋なのかと思い始める。

「やっぱり? お前は……何を言ってるんだ?」
 出来の良い自慢の息子へポアーチは初めて『こいつ、馬鹿なんじゃない?』と疑問を抱いた。
「だって今日会ったばかりで、ちょっと声を掛けられただけで……」
「それは普通に一目惚れだろ」
「一目惚れ? これが?」
 フィクションの中の出来事じゃないんだと呆然とする。
「一目ぼれじゃなかったら、何なんだ? 顔を赤くしてボーっとして、溜息ばかり吐いて、どうせ相手の女のことばかり考えてるんだろ?」
「……うん。でも、でも僕は相手の名前もまだ知らないんだよ」
「馬鹿野郎っ!」
 ポアーチは人生で初めて息子を思いっきり怒鳴りつけた。エルシャンも生まれ変わって初めての経験に思わず身をすくませる。
「名前は聞いておけ。聞かないでどうするんだ?」
「えっ、あ……はい」
 まるで学校でのジヴァの様にエルシャンは、ポアーチの勢いに飲まれてしまった。
「当然、相手に自分の名前くらいは名乗っているんだろうな」
「…………名乗ってません」
「失望した! お前には失望した。トリマ家はお前の代で終わりかもしれないな。こんなのが俺の子供だなんて……」
「どうして、そこ
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