アインクラッド編
回想――涙の理由
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――――ねえ、何でこんなことになっちゃったの? 何でゲームから出られないの? 何でゲームなのに、本当に死ななきゃいけないの? あの茅場って人は、こんなことして、何の得があるの? こんなことに、何の意味があるの・・・・・・?
キリトは今でもそのサチの問いに対する明確な答えを持ち合わせていない。
当然だ。キリトとてサチと同じくこの世界に囚われた1人のプレイヤー。
ただ、少しレベルが高いだけの、何ら変わらない普通の女の子。
だから、キリトは無根拠な薄っぺらい言葉しか言えなかった。
――――・・・・君は死なないよ
――――・・・・ほんとに? ほんとに私は死なずに済むの? いつか現実に戻れるの?
――――ああ・・・・君は死なない。わたしが・・・・そして〈月夜の黒猫団〉が守ってくれる。このゲームがクリアされるその時まで。
嘘で塗り固められた言葉だが、その言葉を聞いたサチはキリトに身を預けて泣いた。
そしてそれから毎日、キリトとサチは同じ部屋で寝た。
他愛のない話をしながら、サチが眠りにつくまでキリトは見守り続けた。
そのせいで夜中のレベリングに通うことはできなくなったが、そんなことキリトにとって些細なことだった。
今からすれば、傷の舐め合い、だったと思う。
キリトは非テスターを見捨てたビーターとして生活していたことへの罪悪感。
サチは1人死ぬことに怯え、逃げ続けている事での仲間への罪悪感。
そんな悲しい関係。
もしかしたら、自分とサチは似たもの同士なのかもしれない、とキリトは思った。
だが、悲しい関係だろうが、傷の舐め合いだろうが、キリトにはどうでも良かった。
この世界に来て初めて知り合い、心の内をさらけ出してくれた女性プレイヤー、サチ。
その存在はキリトにとって大切な物になっていっていた。
自分はこのギルドの仲間じゃない。
それでも、このギルドを、サチを、守ってみせる。
キリトはサチの安心しきった寝顔を見ながら、そう決意していた。
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