アインクラッド編
回想――涙の理由
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驚きの声を上げた。
そんな注文がくるとは予想外だったからだ。
結局、キリトが自ら女性プレイヤーであることを明かしてから30分後。
〈月夜の黒猫団〉5人の完全にシンクロした叫び声で集まってきたモンスターを片付けてから、落ち着いたケイタに誘われて、とある一店の酒場に入り、打ち上げを兼ねたキリトへの感謝会が行われた。
まあ、実際のところは感謝会ではなくキリトへの質問タイムだったが。
その場でキリトは一つだけ彼らに頼みごとをした。
内容は当然、キリトが女性プレイヤーであることを秘密にしておいて貰うことだ。
全員、なぜキリトが性別を偽っているのかの理由すら聞かずに了承してくれた。
しかしながら、この世界において口約束など何の拘束力も持たない。
快諾してくれた彼らを疑っていたわけではないが絶対の安全が保証されていなかった。
だからキリトは交換条件として自分に出来ることはないか、と訊ねた。
「僕たちの窮地を救ってくれたんだから、それで充分だけど・・・・・・」
と、渋っていたケイタが思いついたように出した提案が、つい先ほどの注文である。
驚くキリトにケイタが続けた。
「さっきも言ったけど、僕たちいつかは攻略組に参加したいと思っているんだ。けど、キリトも見て分かると思うけど僕たちのパーティーは前衛と後衛のバランスが悪くてさ・・・・。良かったらこいつのコーチを頼めないかな」
言いながらケイタは隣に立っていたサチの頭にポン、と手を置く。
「こいつの装備は両手用長槍でさ。ササマルに比べて熟練度が低い今の内に前衛ができる盾持ち片手剣士に転向させたいんだけど、勝手が分からないみたいなんだ」
ぐりぐりと頭を撫でられているサチは不満そうに唇を尖らせる。
「なによー、人をみそっかすみたいに。だって私、ずっと遠くから槍で攻撃するだけだったじゃん。それを急にモンスターの目の前で戦えって言われてもおっかないよ」
「盾の後ろに隠れてたら良いって、何度言えば分かるかなー。お前は昔っから怖がりすぎなんだよ」
そのやり取りを見たキリトは思わず笑みを浮かべた。
フィールドで会話している時も思ったことだが、攻略組では見られないアットホームな雰囲気を醸し出している彼らがめずらしかった。
キリトの視線に気づいたケイタは照れくさそうにする。
「いやー、俺たちリアルでも友達でさ。同じ学校のパソコン研究部に所属してるんだ。あっ、でも心配する必要はないよ。キリトもすぐに仲良くなれるよ、絶対。だから、気の向いた時だけでも良いから頼めないかな? サチも女の子に教えて貰う方がやりやすいだろうし」
最後に慌てたように、
「あっ、別に断ってくれても全然気にしないからね!」
と、付け足したが、顔を見れば本心では
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