アインクラッド編
回想――涙の理由
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ど、あれがリアルの顔だなんて想像できないよ」
笑いながら話すサチにキリトも頷きで同意する。
今までも何度も思ってきたことだが、アスカは色々と規格外な男だ。
第1層で出会った時もパーティーメンバーの名前の確認の仕方さえ知らないくせに、超絶速度の〈リニアー〉を正確に叩き込む細剣の腕前を既に保持していた。
まあ、流石に顔の造形をそのままにしてゲームをしていた、というのにはかなり驚いた。
よもや名前までリアルネームを使っているなんて事ないだろうな、と考えていたキリトの耳に軽快な電子音が響く。メッセージを受託した合図だ。
「誰から?」
サチからの問いに答えるべく、ウインドウを操作して差出人を確認する。
「アスカだよ。『ボス戦は明後日。明日はボス戦に備えてフィールドに出る』だってさ」
私情を挟まない、伝えたい内容だけを簡潔に纏めてあるアスカらしいメールに思わずキリトは苦笑する。
すると、メールの内容を聞いたサチは暗い表情になる。
「・・・・サチ、大丈夫か?」
気遣わしげな声音で訊ねる。
最初から半ば予想していたことだが、やはりサチは前衛に出ることを恐れているままだった。
きっと本心ではボス戦に参加することも望んでいないのかも知れない。
サチがそうなってしまった原因の一端は自分にあると思っているキリトは申し訳なくなる。
「うん、大丈夫」
強がっていることは直ぐに分かったが、敢えて追求することでもないだろう。
「そうか」
キリトが返事を返すと同時にサチがキリトの髪の毛からタオルを外す。
「はい、終ったよ」
「ありがと」
「どういたしまして・・・・って、私が好きでやっただけだから気にしなくて良いよ」
多少ぎこちないものの、笑顔が戻っているサチ。
と、そこでサチが場の空気を変えるように勢いよく手を叩く。
「さて! じゃあ、ボス戦は明後日なら今日は折角だし遅くまでお話しよ!」
言いながらキリトの手をぐいぐいと引っ張ってベッドまで進む。
「お、おいっ! 聞いてたのか!? 明日、フィールドに出るんだぞ!」
「ちょっとくらいなら大丈夫だよ! それに久しぶりに会ったから色々とお話聞きたいしさ」
フィールドで戦っている時ならともかく、こういった状況ではキリトではサチの勢いに勝てない。
半年前から分かりきっていることなので、無駄な抵抗を諦めたキリトはズルズルとサチに引っ張られていく。
そう言えば、半年前もこうやってよく2人で寝たりしたよな、と再度キリトの思考はもう一度、過去へと誘われた。
「じゃあさ、キリト。無茶なお願いだとは思っているけど、少しの間だけ僕らのレベリングに協力してくれないか?」
「えっ?」
キリトは
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