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故郷は青き星
第八話
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 【学校】フルント星社会に義務教育制度がある以上。子供達が毎日通う学校という施設は存在した。
 ほとんどの学習内容自体は仮想空間でも教える事が出来るのだが、やはり現実の集団の中で対人関係から身に付く社会性・社交性。そして競い合える同等の存在は学校生活の中で身につけるモノだと言う考えの下に、近代以降に学校教育が確立した以降ずっと変わらず続いてきた。
 現在9歳になったエルシャンは、今年度から初等教育学校に入学した弟ウークとともに通学するのだが、2人が一緒に登校するようになった新学年が始まってからまだ10日しか経っていないにも関わらず遅刻魔の称号を得ていた。
 去年までエルシャンにはそんな汚名は無かったのだが、今年からはウークも学校に通うようになると、まだ5歳のベオシカとムアリの双子の妹達が、毎朝玄関まで見送りに来るのは良いのだが、ユーシンの手を握り締めながら学校に行こうとする2人を『寂しいから行かないで』と言わんばかりの縋るような視線でじっと見るために、なかなか出掛けられないのだった。
 去年までは、エルシャンが学校に行っても、ウークが家に残るため妹達の視線はここまで切実に訴えてくるものではなかった。それに、ちょうどウークも兄離れを始めて以前ほどエルシャンにべったりでなかったので問題は無かった……未だ弟離れできないエルシャンを除けば。
 しかし、ウークまでも居ないとなるとベオシカもムアリの我慢の限度を超えるのも当然と言えた。
 玄関を出て扉を閉めようとすると、扉の向こうから妹達の今にも泣きそうな瞳に射すくめられ固まってしまい、ユーシンが「そろそろ学校に行かないと遅刻するわよ」と強引に送り出すまで動けなくなる兄と弟だった。


 HR開始の予鈴を聞きながら、校舎の玄関を潜り抜けウークを1年生の教室に送り届けた後、階段を駆け上がり自分の教室へと滑り込みセーフ! と呟いたら目の前に担任が立っていた。などという見慣れた光景に出会うことは幸いなかった。
 エルシャンはざわめく教室へ入ると「よう!」と手を挙げて軽く挨拶して──こういうのがおっさん臭いと思われる原因の一つだった──最後列の自分の席に着く。
 教室の様子は教壇のある位置が一番低く、生徒が座る席が後ろに行くほど床が高くなっていて、教壇の後ろに黒板が無い事以外は日本でも大学などで見かける教室とそれほど変わりは無かった。
 エルシャンが席に着いてから30秒ほど後に担任の男性教諭が扉を開けて入ってくると、真っ先にエルシャンの席に視線を向けるが、そこにドヤ顔で席に着いている彼の姿を見つけると微妙に悔しそうな表情を浮かべて教壇に立った。

 HRでの伝達事項は、各自の情報端末に転送済みだが、特に注意すべき点を口頭で述べ、中でも問題ありそうな生徒にはしっかりと確認を取りながら伝えていく。
「地
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