第八話
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球もフルントもこの辺はあまり違いが無いんだよな……」
そう呟いたエルシャンに担任の声が飛ぶ。
「トリマ。明日も遅刻はするなよ。それじゃHR終了。1時間目の準備をしておけよ」
その言葉にクラス中に笑いが起きる。担任は教室を出る際にドアの前で振り返り、エルシャンをドヤ顔で一瞥すると出て行った。
「子供だ」
自分も似たような子供っぽい挑発をしておきながら、自分の前世からの累積年齢なら同世代に当たる担任をそう断じた。
初等教育過程も4年目に入ると数学は幾何学や代数学と日本の高校レベルの授業内容になる。フルント星の初等教育過程は日本の小中高の12年間に匹敵する学習を5年間で終了させるのだった。
一般的なフルント人の知能レベルが、地球人に比べて特に高いと言うわけではないが、学習装置による知識の刷り込みや補助脳による高い演算能力によるサポートあるため決して無理なペースではなかった。
そして高等教育過程に入れば大学、学士課程以上のレベルの教育と、パイロット教育が始まる。
フルント星社会において高等教育過程終了後の進路にパイロットや軍関連の仕事を選択する者は30%を超える。しかし逆に言うと全生徒の1/3に満たず、義務教育の学習要綱にパイロット教育が含まれるのは、フルント人パイロットの更なる増員を求める連盟からも強い要請に応えたという表向きの理由とは別に、フルント星社会が多くの国民をパイロットにする以外には成り立たない国家であるのが真の理由だった。
労働力の3割以上が軍関連に奪われるような状況が数世代にもわたり続けば社会は歪なものにならざるを得ない。
現在のフルント星社会は、多くのパイロットを連盟軍に提供する事で獲得した外貨により様々な物資や製品を他星系から輸入する事で成り立っている。
第一次産業・第二次産業は機械化・自動化をフルント星より技術水準の高い他星系に頼ってもなお人手は不足し、イルヌ星系のみでは自給自足する事は不可能であるだけでなく、第三次産業においてはより深刻な人手不足が進み、サービス業は本体のサービスのみを自動化により処理するばかりで本来サービス業にこそ必要な人手は全く無い。
小売業などは一部の高級志向を狙った店を除けば、ほぼ店舗を持たないネットを通したサービス業と化しており、多くの人間が小売業とはそういう形態であるものだという認識すら持ってしまっているのが問題の深刻さを物語っている。
娯楽業に関しては以前に説明があったように壊滅的であり、日本人の感性をもつエルシャンには厳しすぎる環境であり、全般的に文化レベルが停滞から後退へと向かっていた。
そんな中、エルシャンが再現した和食……風の料理を用いてトリマ家は、レストラン経営や食品販売に乗り出したところ、停滞していたフルント星の食文化に新風を吹き込ん
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