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木の葉芽吹きて大樹為す
双葉時代・発足編<前編>
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そんな赤い顔で睨まれても全然怖くないよー、お姉ちゃんは。

「なんだよ、扉間」
「そう言う姉者こそ……いずれは結婚しなければいけない身でしょうに。若い者の間では誰が姉者と結婚するかについて、話が上がる様になってきましたよ」
「ははっ! 扉間、お前ちょっと想像してみろ。オレが旦那さんが笑顔で迎えている様を」

 よく性別を勘違いされるが、私は女である。
 その事を踏まえている弟に笑って言えば、扉間は表情を真剣なものに変えた。

 ――普段ミトがしてくれる事をこの千手柱間がしている。
 その場面を想像したらしい弟が、顔を苦痛に歪めた。

「な? 全く思いつかないだろ?」
「むしろ、笑顔で敵の一軍を吹っ飛ばして来たと報告されそうですね」

 なんで想像出来ないんだ、オレ……!
 そんな事言いながら頭を抱えている弟の銀色の頭を、くしゃくしゃと撫でる。
 傍目には固そうな扉間の髪だが、触ってみると意外とさらさらしているのだ。このギャップが堪らない。

「まあ、まだオレもお前も二十歳そこそこなんだ。オレは兎も角、お前は変な娘さんに引っ掛かったりすんなよ? 相手への貢ぎ物への支払いに千手の財政を傾けたとか報告されたら、オレとしても困るからな」
「そんな事する訳ないでしょう!!」

 そうだとは思うけど、恋は盲目って言うからねぇ。
 ただでさえ何が起こるのか分からないのが、人生だもんね。

*****

 基本的に、忍者は雇われ集団である。
 依頼主から内容に似合った報酬を受け、それをこなせば新たな依頼主を捜す。
 千手の様な一族の場合、その成功率の高さからわざわざ探さなくても、向こうの方からお金がどっさり入った袋を持ってやって来てくれるから、知名度の高い一族の方がそう言った意味では楽が出来るのだ。



「今回の任務は領土を荒らすはぐれ忍者共の捕縛、または駆逐……ね。他には何があるんだ?」
「不審な動きをしている隣国の内情調査、大名のご子息の護衛……それに傭兵として戦って欲しいというものまで」

 ――とにかく盛りだくさんですわ。
 そう言って、ミトが疲れた様に笑う。

 仕事で集落を空ける事の多い私や扉間の代わりに、ミトがこうして千手に持ち込まれた依頼の仕分けをしては、一族の者達に振り分けてくれる。
 基本的には各々の能力に適した仕事が回ってくるものだが、中には直々に私や扉間にこなして欲しいと、前書きの付いた依頼書もある。
 ちょっとニュアンスは違うだろうが、ある種の有名税の様なものだ。

「名前が売れ出したのは良かったけど……、毎度毎度こういうのが続くとちょっとやんなるなぁ」
「それもこれも、柱間様への評価の高さ故ですわ。今じゃ、柱間様は誰もが一目置かれる実力者ですもの」

 
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