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不可能男との約束
再開の語り合い
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他の国の総長とかならば、自前の能力や何やらで対処をしてくれるのであろうけど、うちの馬鹿は無能が売りの馬鹿なので当てにすることなど全然できない。
まぁ、もう一人(・・・・)の馬鹿は大丈夫だろうけど。
とりあえず、軍師としてその状況は不味い。
それを解決する策は至って単純で

……僕が確実に勝利して呪いを振り払ったと確信すればいい!

〈愚かなるマクベス夫人。夫に連れ添い、しかし、その野心に共鳴して燃えた女よ。王の暗殺を手伝い、成功させ、されど───王たちの亡霊に怯え、やがて闇に落ちて死ぬ〉

《関係ない。知った事ではない。だが、立ち塞がるのならば、それは自分の敵だ。一撃で済ますつもりはない。ゆるみない連の打撃だ》

と言いたいところだがシェイクスピアに合わせて戦っている暇はない。
連続描写を書き入れ、背後と前のマクベス夫妻を打撃し続け、足止めさせ、自分はこの戦闘の鍵であるダッドリーの方に向かおうとする。
だが、向かおうとしておかしなものが見えてしまい、急がなければいけないという意思に反して足が止まる。
光だ。
文字を血肉として作られているのは人影である。
十や二十そこらの数ではない。どう軽く見積もっても、三桁は越えている人数であり、それらはまるで木々にも似ており、しかし、剣と盾を握っている。
森が自分を狙っている、と錯覚ではなく、事実としてそれを認める。
文字の障壁で、こちらの打撃を防御していたシェイクスピアは、やはり、何事もなかったかのような表情でこちらを見ている。

「どうしたんだい、マクベス?パーナムの軍勢が君を睨んでいるよ?」

「マクベス? 馬鹿な。僕はまだ」

呪われていないはずだ、と言おうとしたときに自分の足元からも光が見えることに気付く。
自分の足元に文字列が渦を巻くように広がっていた。
その光景が、少し気持ち悪く、一歩下がりたくなったが、気合で耐える。
そこで、シェイクスピアが、この乱戦の中では小さい音なのに、不思議なほど響く声で囁いてくる。

「役そのものが取り憑くのに失敗しても、役をする配役が潰されたら、別の誰かが代わりにするよね? 本来する役者が風邪で来れなくなったから、舞台は中止、なんていうのは小学生でもやらない。プロなら尚更だ───だから、スポットライトが次の演者を選ぶのさ」

この光の輪によって照らされている状況を言うのならば、皮肉が効いている。
良い性格している、と舌打ちをしつつ、疑問に思ったことを吐き出した。

「それだけの文字列を排出する術式を、どうやって賄ってる!? 個人レベルで補える排気じゃないはずだ!」

「気になるかい?」

当然だ、と頷こうとした所で、頭の中で何かを閃いた。
戦術とかではない。
知識として、お前は知っているであろう
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