第二十九話 二つの顔を持つ男
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オウ攻撃の前に敗れ去ったようです」
「そうか」
その少女幽羅帝はそれを聞いて落胆した声を漏らした。
「またしてもか。惜しい者達だったが」
「はっ」
「葎」
ここで幽羅帝は彼の名を呼んだ。
「どう思うか」
「といいますと」
「とぼけるでない。そなたはあの木原マサキについてどう思うか」
「木原マサキに」
その冷静な声が急激に変わっていく。
「言うまでもありません」
その声は憎悪に覆われていた。先程までの冷静さは何処にもなかった。
「そうか。それではわかるな」
「はい」
「そなたに次の出撃を命じる。木原マサキの首を所望する」
「おおせのままに」
葎はそれに頷いた。
「では」
そして姿を消した。遠くで何かが動く音が聞こえてきた。
「シ=アエン、シ=タウ」
幽羅帝は彼女の前から姿を消した二人の名を呟いた。
「そなた達も行ってしまったか。また私の愛する者達が」
「フン」
それを聞いて遠くから哂う者がいた。だが彼女はそれには気付かない。
「葎、必ず帰って来て。私は貴方まで失いたくはないの」
「また甘いことを」
「・・・・・・・・・」
その哂う者とは別に彼女を見る者がいた。だがやはり彼女はそれには気付かない。
「お願いだから。もう誰も失いたくはない」
「甘いものだな。皇帝だというのに」
「・・・・・・・・・」
二人は正反対の顔をしているようだ。だがそれは陰に隠れ見えはしない。それを知ってか知らずか二人は帝を見続けるのであった。
確かに顔は正反対であっただろう。だが目の色は同じであった。それは何故か。それは当の本人達ですら気付いてはいなかった。それに気付くには彼等もまた不完全であるということであろうか。人とは不完全なものでしかないのだ。例えどのように生まれ出たとしても。そしてそれに気付いても気付かなくても時として残酷な運命が待っているものなのである。そう、気付いても気付かなくても。それは神のみが決めることである。
帝は部屋に下がった。それを見て二人も何処かへと消えた。だが彼等もまた俳優達の一人である。それには気付いてはいないようであったが。
「木原マサキか」
「そうだ」
ラストガーディアンの司令室で沖はマサキを問い詰めていた。
「では聞きたいことがある」
「秋津マサトではなくてもか」
「無論」
沖はそう答えた。
「私は木原マサキに聞いているのだ」
「ククク」
マサキはそれを聞いて不敵に笑った。
「わかった。では聞いてやろう。何だ?」
「御前は一体何を考えているのだ?」
「何を!?」
マサキは笑ったまま目を動かした。
「おかしなことを言う。それは御前もわかっているのではないのか」
「私がわかっているだと」
「そうだ。だから御前はあの時俺を殺
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