第一話 幼児期@
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そう言って、家の冷蔵庫から卵を3つ拝借する。俺と双子である妹ももう4歳だし、大丈夫だろうと卵を1つ持たせる。妹は卵の丸みが気に入ったのか、両手で楽しそうに転がしている。
「あれ? でもお金ないとおんせん入れないよ?」
「幼児は無料で入れるから問題ない。こういう特権は使える時にフル活用するべし。はい、ここテストに出るから覚えておくように!」
「はーい!」
それはなんでもない、元気よく返事をする素直な妹と、明らかに余計な知識を吹き込む兄との日常の一コマだろう。
「どこのおんせんに行くの?」
「今回はミッドチルダの北部にある温泉旅館だ。別の次元世界の温泉でもいいけど、あんまり遠いと母さん心配させちゃうからな」
俺達の住む世界の名は、『ミッドチルダ』。数多ある次元世界の1つであり、俺達兄妹が産まれ、育った世界の名前である。魔法という文化が最も発達している世界であり、また科学とも共存することを選んだ大きな世界。ここは、魔法や不思議な力を使えることが認められている、そんな世界であった。
「んじゃあ、早速温泉に行きますか。しっかり手を繋いでいろよ」
「私もお兄ちゃんみたいに、『転移』使いたいなー」
「お兄ちゃんのはレアスキルだからな…。でも確か魔法には、転移魔法があったはずだから、頑張ればきっと使えると思う」
「ほんとっ!」
妹の言葉に、俺は自分の知識……いや、記憶から引っ張ってきて答える。うろ覚えだけど、確かに転移魔法を彼女は使っていた。それに彼らも本のページを集めるために、次元世界を転移魔法で渡っていたはずだ。転移魔法の難易度はわからないけど、難しいのだろうか。帰ったら魔導師である母さんに聞いてみよう。
「お兄ちゃん早く行こうよ」
「おっ、そうだったな。いやぁ、考え事をしているとついそれに集中してしまう、僕の悪い癖です」
「そうなの?」
まぁうん、そうなの。ネタが通じなかったことにちょっと寂しさを覚えた。
とりあえず俺は、妹の手を握りこみ、意識を集中させる。大体のイメージを頭の中に思い浮かべながら、俺は転移を発動した。
相変わらずの便利仕様に助かる。ある程度のイメージが必要だが、それでとんでいくことができるのでそこまで難しくない。母さんも最初はその性能に驚いていたけど、レアスキルと聞いて、そんなものかと納得してくれた。レアスキルって言葉すげぇ。確か未来予知ができるレアスキルもあったはずだし、『レアスキル=理不尽』という方程式でもあるのかもしれないなー。と、準備完了。
「それじゃあ行くぞ、転移!」
次の瞬間、俺たちは家から忽然と姿を消した。
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《新暦36年 秋 NO.1》
『魔法少女リリカルなのは』
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