第9話 転入生と茶碗蒸し
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ったら本当に嬉しそうね。そんなに若くて綺麗な女の子がウチに来てくれるのが嬉しいのかしら?
おかしいわねぇ、私は確か純吾君をお手伝いに頼もうって思ってたのに、どうしてここまで話がずれちゃったのかしら」
「そ、それは純吾君が家に来てくれたらと」
思考が硬直しているからか、馬鹿正直に事の切っ掛けについて話す。その答えに、桃子はより笑みを深くして
「えぇそうね。士郎さんのよ・け・い・な提案のせいで、ここまで場が混乱しちゃったのよね。途中まで本当にいいフォローをしてくれてたから安心してたけど、女の子が目の前にいると、どうしてこう暴走しちゃうのかしらねぇ?」
深い笑みのまま肩に置いていた手を士郎の耳に持っていき、思い切り抓り上げた。
「いたっ! 桃子、もうちょっと優しく」
「いいえ! 今日という今日はしっかりと女性との接し方について考えてもらいますっ! 大体いっつもいっつも士郎さんは店に来た女性客にいい顔ばっかりして――」
と、そこで桃子は店内がシンと静まり返っている事に気づく。唖然とした表情で彼女たちを見る客に軽く微笑んで、「お見苦しい所を失礼しました」と言って士郎をそのまま店の奥へと引っ張って行った。
後に残ったのは料理を楽しむのも忘れて呆然としているたくさんの客に、さっきまでの取り乱しぶりが嘘のように桃子達が去って行った方を見つめるすずか達。
そして先程までの行動は確信犯的なものだったのだろう、ニコニコとして「逝ってらっしゃ〜い♪」と桃子達を小さく手を振りながら見送るリリーだけだった。
10分後、妙にすっきりとした表情をした桃子だけが戻ってきた。そしてとてもいい笑顔でポンッと手をあわせ
「さって、野暮用も終わったことだしっ!! 純吾君、ここの料理を目いっぱい楽しんでいってね!」
そう提案した。勿論、これを否定するという選択肢は純吾達にはなく、急いで首をぶんぶんと縦に振った。
その後は、予定通り純吾の転入のお祝いとなった。純吾とリリーは料理の美味しさにびっくりし、それを見てよろこぶ他の面々。純吾にとってはじめての翠屋は、とても和やかな雰囲気の中過ごす事が出来た。
ちなみに帰り際、「これからよろしくお願いします」という事で大量の茶碗蒸しを差し出してきた純吾に、一同唖然とする。「どっからそんなに出てくんのよ…」というアリサの呟きがやけ印象的だった。
さらにちなみに、翠屋閉店後に夕食として桃子が事情を話し茶碗蒸しを出してみると一人「小学生に料理で負けるなんて……」とうなだれるなのはの姉の姿があったという。
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