第9話 転入生と茶碗蒸し
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吾とリリー。リリーにしては大人しいが、初対面の人に対する挨拶としていつものハイテンションはいけないと、最近の忍たちの必死の教育で教えられたためだ。
この光景を見ていたら、毎回決死の覚悟で教育に当たった忍とメイドの姉妹が感動で滂沱の涙を流すだろうなぁ〜、とぼんやりとすずかは思ってみる。
「そうだ、お母さん。純吾君の茶碗蒸し、とっても美味しかったの! それに、純吾君お料理に興味あるんだって」
なのはが唐突に桃子に今日あったことを話す。自己紹介のついでに、彼の得意な事をしってもらおうという考えだ。
「へぇ、そうなの?純吾君、よかったら私に少し味見させてもらえないかしら」
「ん…分かった。はい」
朝と同じくごそごそと制服のポケットから茶碗蒸しを出す純吾。
一体どこから出てきたのかと桃子は呆気にとられ、なのはたちはもう見慣れたと苦笑い。リリーは「さっすがジュンゴ、いつでも準備万端ね」と頭を撫でる。
「どうやって出てきたかは……置いておきましょうね。じゃあ、味見させてもらうわね」
苦笑いしつつも茶碗蒸しを受け取る桃子。スプーンを茶碗蒸しにいれ、口に運び――
「すごい美味しい。これ、本当に純吾君が作ったの?」
驚嘆する。とてもなのはと同じ小学3年生が作ったとは思えないほど、はなめらかな口当たり、ほどよく効いた出汁の風味など、絶妙な美味しさの茶碗蒸しだった。
「純吾君の茶碗蒸し、ノエルやファリンもすごい褒めてたもんね」
「確かに、今日初めて食べたけど、昔パパに連れて行ってもらった料亭と変わりなかったわ」
つられて感想を言うすずかとアリサ。
「ん……ジュンゴ、親方に茶碗蒸しだけは褒めてもらった」
口々に褒められて、少し恥ずかしげな純吾。細い眼をその言葉に喜ぶように、或いは何かを懐かしむよう細めた。
「よっぽどその親方さんの教えが良かったのね。いま、その親方さんはどちらに?」
桃子が納得するように頷いて質問をする。これだけのものを小学生が作れるようにするほどだ、同じ料理人として是非一度会ってみたいし、料理を食べてみたい。
「………親方、もう会えない」
しかし、純吾から返ってきたのはそんな言葉。先程までの嬉しげな様子はなりを潜め、懐かしむ目はそのままに、口をグッと食いしばった。
リリーはそんな純吾を見て悲しげな顔をして、気遣うように抱きしめる力を強める。
「ご、ごめんなさい。そんな事になっているとは思わなかったから」
慌てて謝る桃子。唐突に悲しげなものに変わった雰囲気に、なのはたちもどうしたらいいか分からず視線を色々に彷徨わせる。
誰もがこの場をどうすればよいのか、お互いを見あっていると
「お〜い桃子。お客さんからシュー
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