第9話 転入生と茶碗蒸し
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長。 その体を包む淡いピンク色のトップスや、ショートパンツから覗く手足は春に奇跡的に残ったなごり雪のように白くて、そして小鹿の様にすらっとしている。
上に目をやれば白い肌とは対照的な、やや青みがかかった腰までとどかんとする長い黒髪に、少女から大人の女性への移り変わる一瞬にだけ魅せる、可憐さと美しさが見事に調和した面立ちをしている。
そんな女性が店の奥、けだるそうに窓際の席に座っていた。
窓から差し込むオレンジ色の夕日に白い肌を照らされた彼女は頬杖をつき、足を組み座っている。やや憂いをおびたその表情は待ち人を待っているかのようであり、夕陽を浴びてなお白く輝くその姿に、その一角にまるで絵画の一場面のような雰囲気を与えていた。
空いた片手でその長い黒髪をかきあげた。あがった傍から髪がさらさらと流れ、その間からちらと白いうなじがのぞく。
異性はもちろん、同性からもその美しさにほぅ…、とため息をついてしまう。
「ただいまなの〜」
「おじゃましまーす」
「こ、こんにちは」
「……こにちは」
そんなある種異様な雰囲気に包まれていたが店に、呑気な声が響く。
ばっ、と視線が注目する。そこにいたのは聖祥大付属小学校の白い制服に身を包んだ4人の小学生。いつもとは違う雰囲気と、注目をされたことに、「ふぇっ」「な、何よ」「ひっ」「(きょろきょろ)」と少し混乱気味だ。
と、渦中の女性が唐突に席を立った。
その行動にまたもや視線がその女性に移る。さっきまで、何もせず座っていただけだったのだから、これからどうするのか注目は否が応にも集めてしまうのだ。
そのまま女性は、店中の視線を一身に受けているのをものともせず彼らの元へと歩いていき
「あ〜ん、ジュンゴ半日ぶり〜! 半日もジュンゴに会えなくてもちゃんと留守番我慢できたお義姉ちゃんをほめてほめてー! はぁぁ〜、癒される〜。ジュンゴに頬擦りすると癒されるわ〜。我慢した役得よね〜。
っと、そ・れ・に・し・て・も! この子たちはどういう事なの!! すずかちゃんとアサリンは良いとして、またこんなかわいい子捕まえてきて! ジュンゴにはお義姉ちゃんがいるでしょ、お義姉ちゃんで我慢しなさい!
いいえ、やっぱり我慢は体に毒よね♪ 大丈夫よ、今すぐお義姉ちゃんと少し早い実践保健体育を――」
目の前の小学生の一人に抱きつき、あまつさえ不穏な事を言い始めたのだった。
バッ、と店中の視線がそれ、急速に普段の陽気な翠屋が戻ってくる。
視線がそらされた先にあったのは、先程までの憂いを秘めた雰囲気をぶち壊して少年に抱きつき頬擦りする女性と、目を白黒させる少年。
それを傍目に見つつ「にゃはは…」と乾いた笑いをあげたり、顔を真っ赤にして手で顔を覆ったり、怒った
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