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その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)
第9話 転入生と茶碗蒸し
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なのははちょっとだけ驚いていた。

―――やっぱり、これから楽しい事が待っていそうなの

 けれどもその驚きは彼女にとっても心地よいものだ。いつの間にか変わっている自分の気持ちに少しだけ楽しい気分になり、朝のホームルームが終わったら彼に話しかけに行こうとなのはは思いなおすのだった。





その後、ホームルーム終了後の休み時間

「はじめましてなの! 私、高町なのは、これからよろしくね!」

休み時間になって他の生徒が純吾のもとへ転入生への洗礼である質問をしに行こうとする中、なのはは真っ先に彼のもとへ飛び出していき、自己紹介をした。

「鳥居、純吾。………高町? 師匠?」

「ふぇ、師匠ってお兄ちゃんの事?」

「ん…。師匠、キョーヤ。最近鍛えてもらってる」

「本当にお兄ちゃんと知り合ってたんだ……。うん、私はお兄ちゃんの妹だよ」

確かに最近兄の恭也は月村邸に良く出かけていた。先程のアリサ達との話といい、これが良く出かけていた理由かと納得する。


「お兄ちゃん、後でお話なの……」


 けれども、感情は納得いかない。だから後で絶対お話しする、なのはは心の中で勝手に決心する。
 そうして兄になんと文句を言ってやろうか考えていると、ふと、純吾がごそごそと制服のポケットから何かを取り出すのが見えた。

「これ……」

「ふぇ?」

 取り出されたのは茶碗蒸しだった。陶器の器に入れられ、口の部分にはきれいにラップがかかっていて中のおいしそうな黄色や具材が見える。

「え、えっとこれ何?」

「ん…お礼。
師匠が色々と教えてくれて、ありがとうございます。
それで、一杯できる事が増えたから、ありがとうございます」

「にゃ、にゃはは……」



―――いい子なんだろうけど、やっぱり、良く分からないの。

 受け取った茶わん蒸しと、こちらに向けて頭を下げる彼を交互に見ながら、自分の頬がひきつるのを感じるなのはだった。





「ねぇ、純吾君。これから翠屋ってお店に行かない? 純吾君の転入おめでとう会したいなって」

 そうすずかが声をかけてきたのは、その日の放課後だった。

 あの後、意外にも親しみやすい奴なのではないかと考え直したクラスメイト達が、休み時間に大挙して目を白黒させたりと、純吾は転入生としての洗礼を受けた。
 そんなかなりハードな一日を過ごした純吾は、ふらふらと眠気のため揺れていた頭を止め、普段から細い眼をさらに細めてすずかを見る。

「……すずか、ジュンゴ今日疲れた」

「うっ」

 今の純吾からは年齢に比して大きな体に似合わない、雨の日の中段ボールに捨てられている仔犬のようなとても弱々しいオーラを放っていた。そ
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