無印編
第二十二話 裏 後 (なのは、クロノ、プレシア、リンディ)
[22/24]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るように言う。
「ねえ、知ってる? 井戸の深さを知るときに石を落とすんだって」
それが何だと言うの? と平常のプレシアなら言うだろう。だが、今のプレシアが返事をできるはずもなかった。何も返事しないプレシア。それを面白くない、と思いながらもなのはは言葉を続ける。
「この下の虚数空間の深さってどのくらいだろうね?」
にやぁ、と嗤うなのはにプレシアがようやく反応する。その顔にはまさかっ!? という驚愕の表情が浮かんでいた。それから、プレシアが反応するよりもなのはのほうが早かった。手を伸ばすプレシア。しかし、それよりも先に指先から発射された射撃魔法で容器の床を壊すなのは。
アリシアが入った容器は重力に従って斑模様の人が本能的に恐怖を覚えるような虚数空間に向かってゆっくりと落ちていく。何とかアリシアの身体だけでも、と手を伸ばすプレシア。もしも、そのまま手が届いていれば、プレシアの手はアリシアの手を掴んでいたかもしれない。だが、それはなのはの足によって阻止された。
ずだんっ! と踏み込むような音共にはのはによって踏みつけられる伸ばしたプレシアの手。プレシアの手はアリシアに届くことはなく、プレシアの目の前で虚数空間へとゆっくりと落ちていく。落ちたアリシアの容器は、ゆっくりと虚数空間に落ちていき、遠近法に従い段々と小さくなっていき、やがてその姿を虚数空間の中に消していった。
「あ、あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ」
プレシアの慟哭。それをなのはは心地のよい音楽でも聴くように満足げに聞いていた。やがて、プレシアは意識がなくなったようにプツリと行動するのをやめる。生きる意志がなくなったとでも言うべきだろうか。もっとも、なのはにしてみれば、どうでもいいことだが。
「さあ、帰ろうっと」
なのはは、プレシアの首に翔太がされていたようにバインドを巻きつける。それから天井の自分で空けた大きな穴を見た。あそこからなら飛べばすぐに出口に向かえるはずだからだ。それに、その穴が原因なのだろう。時の庭園自体が揺れていた。もはや、この庭園も長くないと見るべきだった。
―――ショウくん、褒めてくれるかな?
帰った後の翔太がどんな言葉で褒めてくれるか、楽しみで頬を緩めながら、なのはは首にバインドを巻きつけたプレシアを片手に時の庭園を後にするのだった。
◇ ◇ ◇
リンディは、医務室の様子を映したモニターを何ともいえない表情で見ていた。
『さあ、アリシア、今日はどんな髪型にしようかしらね?』
モニターの向こう側では、今回のPT事件の首謀者であるプレシア・テスタロッサが慈愛に満ちた表情で金髪の子ども用の人形の髪を梳いている様子が映し出されていた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ