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木の葉芽吹きて大樹為す
萌芽時代・出逢い編<中編>
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した。いや、もうマジで。

 この場合、この店主のお姉さんが言っている「あの子」とは、ここにいない黒髪少年(兄)の事だろう。何故だ、あの邂逅のどこに気にかけるところがあったんだ……!
 無言で両腕を擦っている私を見て何を思ったのか、番台の上に座っていたお姉さんが優雅に衣擦れの音を立てながら、こちらへと近寄ってくる。
 ――そうして、にこりと猫の様な微笑みを浮かべた。

「まあまあ、折角の機会だ。うちの店で何か買っていかないかい? 日用品から武具・防具に至るまで、この店には色々揃ってるからね」

 ええー。折角のお誘いだけど、いつあの黒髪少年(兄)が弟君を迎えにくるか分からないし、ここは素直に帰っておいた方が良さそうだしなぁ……。

「あ。兄さんなら暫く戻って来ないと思います」

 にこにこしながらの弟君の言葉。
 なんだろうこの子、エスパーだろうか。

「なら……。女の子に贈り物をしたいんだ。何か良い物はあるか?」
「おや。千手の次期頭領も隅に置けないね」

 くすくすと笑いながら、お姉さんが奥に引っ込んでいく。おそらく品物を取りにいくのだろう。
 ……にしても、また自分は男の子に間違われたのか。
 慣れたけどさぁ……、なんか虚しいよね。

「そうだ。これ、あの時の手巾のお礼です。受け取って下さいますか?」
「え?」

 そんな事をつらつらと考えていたら、弟君がポケットから取り出した手巾を私の方へと差し出してくる。
 わざわざ用意してくれていたのか、律儀な事だ。
 そう思いながら取り出された手巾を見ると、その色は薄桃色。――綺麗だけど、どうみても女物だ。

「少年、気持ちは嬉しいんだが……この色はちょっと……」
「どうしてですか? お似合いだと思いますが」

 しゅん、と眉根を下げる弟君。まるで捨てられた子犬の様である。
 まじまじと彼の手の中にある薄桃色の手巾を見つめる。うん、どこからどうみても女物である。
 ううむ……、少年の心が解せない。

「わかった。大切に使わせてもらうとするよ」
「いいえ。むしろばんばん使ってやって下さい」

 ――あなたみたいに綺麗な女の人に使ってもらえたら、オレも嬉しいです。

 微笑みながら付け加えられた一言に、思わず目を剥いた。
 今、この子なんて言った……?

「あの、今なんて……?」
「え? 何がですか?」

 きょとん、と首を傾げてみせた弟君。
 物凄く聞き捨てならない言葉が聞こえた様な気がしたのだが、気のせい、だよな……?

「さて、千手の若。ご要望にお応えして色々と持って来たけれども……おや、どうしたんだい?」

 桐の箱を手に、奥から戻って来た店主のお姉さん。
 その足下には、先程この店にまで自分を案内して
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