第2章 真の貴族
第20話 フリッグの舞踏会
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がらも、そうキュルケに対しては答えて置く俺。どうも、他人の顔、特に瞳を見つめながら会話を交わすのは苦手ですけど、才人のように胸を凝視するのはもっと苦手。
さりとて、あまりにも、視線を彷徨わせるのは……。
もっとも、このパーティ会場自体が、あまり良い雰囲気ではない事が、俺がこの会場内で浮いた存在に成っている理由かも知れないのですが。
何と言うか……、そうですね。たかがダンスを一曲踊る程度で、其処まで気を入れる必要はないと思っている、と説明したら判り易いですか。
例えば、一人の少女に勢い込んでダンスの申し込みを行った挙句、敢え無く撃沈。そのまま、陰鬱とした雰囲気に沈み込むヤツ。そして、そんな少年を見つめていた彼女が、そのダンスを断った少女に向ける視線の……。
魔法使いが、相手をそんな魔力の籠った瞳で相手を見つめたら、どんな事に成るかぐらいは考えた方が良いと思うのですが。
俺としては。
「俺だって、こんなトコロはどうも苦手で」
才人も俺と同じようにそう答えた。
確かに、平均的な日本の男子高校生で、西洋風のダンスパーティの雰囲気に慣れている人間の方が珍しいですか。それに、ここは上流階級の出身者で構成されている学校ですから。
まして、キュルケの周りは特に良くない気が渦巻いていますから、出来る事なら、その男子生徒達を引き連れて、何処か遠くに行って、皆さんだけで幸せになって欲しいのですが。
俺を巻き込まなくても構いません。……と言うか、お願いだから巻き込まないで。
そんな俺と才人を交互に見つめるキュルケ。そうして、
「だったら、私と一曲踊って頂けますか、ダーリン」
そう言って、才人の方に右手を差し出す。
瞬間、キュルケの背後に控えている男子生徒達から、悪しきオーラが立ち昇る。
……って言うか、もう、どうでも良いですから、俺の傍から離れて下さい。皆さん。
俺は、こう言う色恋沙汰のドロドロとした気と言うのは苦手なのですよ。特に、嫉妬などの負の感情は、陰の気を滞らせる原因にもなりますから。
それに囚われ過ぎると、人成らぬ身。鬼と化す者も存在しますからね。
「ほら、才人。貴婦人からの申し出を断るのは非常に失礼な事に当たるから、さっさとその右手を取らなあかんで」
才人の左手から蜘蛛切りを奪い取り、キュルケの方に押し出す俺。そして、キュルケと、その周りで悪い気を放っている男子生徒達と共に、ホールの中心で華麗なステップでも、パートナーの足でも、好きな方を踏んで下さい。
俺に背中を押された勢いで、そのままキュルケの方に一歩踏み出す才人。そして、その才人の右手をあっと言う間に取って仕舞うキュルケ。
……素早い。それに、抜け目がない。
「
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