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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
10.新しい出会いU
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いと思っています。」
「貴様の経歴は知ってるよ。子供の頃から衛士になるための英才教育を受けてきたんだろ?さっきの組手はそれで培われてきたお前の腕を見るためのものだ。その腕前は任官前のひよっことは思えない。正直言ってお前は異常だよ。物心つくか付かないかの時期から遠田という籠の中で純正培養された衛士。その胸の内には世界のためという大義と会社という組織に対する恩義だけだ。そのために徴兵免除という特権を蹴り、衛士でなく技術士官としての才能もありながら進んで前線に出ようとしている。普通じゃない。」
 言いたい放題言いやがって。そりゃ俺が周りと違うのは知ってるよ。昔から感じてきたことだし、今更どうしようとも思わない。だいたいそんなことは人それぞれだろ。
「……それなら、それなら中尉は何のために戦っているんですか?」
「私はな金のためだよ。もう少し言うと息子の養育費を稼ぐためだ。」
 中尉って子持ちだったのか!?初耳だぞ!
「何だ?私に子供がいたらおかしいか?」
「…いえ、ただ意外だったもので…。」
「まあ最初は違ったよ。家が貧乏でたまたま募集してた衛士候補生の適性試験受けたら通ってね。稼ぎもいいし、その時はまだ大陸派遣なんて言われていなかった。でも同期の奴とヤッた時に子供が出来た。思わぬ事態だったけど、まあ腹を痛めて産んだ子だ。かわいくてね。」
「はぁ…。」
 あれ?今何の話してるんだっけ?当初の目的から外れている気がする。
「それでじゃあ母親やるかって時になって父親のほうが大陸で死んじまった。それだけじゃない、同期の奴らもどんどん死んでいった。それで当たり前のことを思い出した。戦争では人が死ぬってことを。」
 本当に今更なことだが……、まあ今の俺じゃ分らないことだ。
「それで身内は子供だけになったわけだが、その子供もそのうち戦争に行くことになる。そう思ったら怖くなった。じゃあ子供を戦争に行かせないためにはどうしたらいいか。徴兵免除を受けるためには家柄か、何か特殊な才能がないといけない。家柄では無理。だったら帝大に入れるぐらい優秀になってもらえれば何とかなるかもしれない。そのためには良い教育が必要で、それには金がかかる。だから衛士やってんのさ。」
 なるほどな…。要するに徴兵免除を蹴って戦場に行こうってのが気に食わないのか。自分の子供は徴兵免除されるかもしれないのに、それを自分から捨てている俺が憎いのか。
「自分のことを気に食わない理由はわかりました…。しかしそれと訓練で創意工夫をすることを咎めることは関係ないと思いますが。」
「おい、あんたは何も分かっちゃいないよ。私が気に食わないのは徴兵免除の特権を蹴ったことじゃない。確かにそれもあるが本当に気に入らないのはその理由だ。世界のためとか会社のためとか言っていたがそれは全部大人の都合だろ?
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