第8話 守る、という事
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攻撃をいなした。
そしてがら空きになった後背から今日一番力を込めた一撃を叩き込んだ。自身の前に進む力と、恭也の後ろからの一撃によって純吾はそのまま数メートルの距離を吹き飛ばされ、更に何度もバウンドをしながら地面を転がっていった。
「まさか、“神速”を使わなければ動くこともできないなんてな……」
苦いものをかみつぶした表情で恭也は呟いく。そして、かなり離れた所に大の字になって転がっている純吾のもとへ向かった。
「最後の一撃、あれは君自身にも風を使って体を浮かせたんだろう? 何重にも重ねた目くらましと言い、今までで一番の速度と威力といい、君の本気がいかほどのものかみせてもらったよ」
そう言って恭也は薄く笑い、手にした木刀の小太刀を見せた。今までどんな攻撃もいなし、壊れる事のなかったそれが、握り手の部分を残して殆ど大半が吹き飛ばされていた。
対して、純吾は答えない。ニット帽などで顔に影がかかって見えづらいが、胸は上下して体に酸素を送り続けている。本当に、限界まで力を絞り出したのだろう。
「だが、自分の体ごと突っ込んでくる奴があるか。成功した時はともかく、失敗したら今のように成るしかないんだぞ。
……これからの君は、ただ自分一人のために戦う事はなくなる。戦い続け、生き残って、そして君が守ると誓った人たちのもとへ帰らないといけないんだ。
くれぐれも、相討ち覚悟で突っ込む事は自重してくれよ」
そう言い残し、恭也は気絶した純吾に背中を向け裏庭を去ろうとする。
その時、後ろから「ぁりが…した…」と小さく聞えたような気がした。
だから恭也は少しだけ不機嫌そうしていた口元を少しだけ微笑んだものに変え、純吾を部屋に運ぶためにもう一度彼のもとへと向かうのであった。
「守る中に自分を入れろ、ねぇ〜。よく言えたわね、恭也」
開口一番、ニヤニヤとしながら告げる忍。
裏庭が見える2階の客間には、今は彼女とノエルだけがいて、恭也を出迎えていた。すずかとファリン、そしてリリーは純吾が吹っ飛び気絶したのを見て、彼のいる部屋へ行くために慌てて出ていったのである。
「いいや、俺だから言えるんだ。父さんの無茶を見て、君を守るときに無茶をしてきた俺だからこそ、彼に伝えないといけない」
イスに座りながらも、真剣な眼差しでそう恭也は返す。
そう、彼だからこそ、無理をした結果取り残された人がどれだけ辛いか、と言う事を一番良く理解している。
彼は古くはテロによって自身の父親、高町士郎が重傷を負い家族が一時バラバラになりかけたという取り残される側になったことがある。
そして最近では忍と知り合い、彼女を命懸けで守り重傷を負ったがために彼女を余計に泣かせてしまった、という取り残す側にもた
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