第8話 守る、という事
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見せるさ」
最後に少しだけおどけるように笑うと、恭也は腰を低くしてすぐにでも動けるように構えをとって純吾が来るのを待つ。
それを見た純吾は、説得するのを諦めたかのように視線を地面に落とし、片手でニット帽を深くかぶりなおした。そして視線と恭也に向け、右手を振り上げて宣言した。
「……行くよっ!」
言葉と同時に振り上げた手に白い光でできたいびつだが長大な剣ができあがる。だが恭也との距離はその剣を使っても埋める事は出来ないため、恭也は眉をひそめる。
その疑問は、すぐに解消されることになった。
「【なぎはらい】!」
地面を削り取るようにして純吾は剣を振るった。瞬間、ズズゥゥン! という先ほどよりも大きな音と共に、大量の土砂が舞い上がり、恭也から純吾の姿を隠した。
さらに土壁の向こうから「ガルッ……」という声が聞こえると、舞い上がった土砂が全て恭也に向けて襲いかかってくる。純吾が風を起こしてこの土砂による津波を起こしたのだと、恭也は瞬時に理解した。
そう考えるや否や、迫りくる怒涛に対して恭也は敢えてその中へと突っ込んでいった。
(……間違いなく、これはフェイクだ)
両手を顔の前で交差させ、砂が目に入るのを防ぎながら恭也は進む。
純吾に本気で来いと言い、彼はそれに答えた。恐らく、この一撃で試合を終わらせようとするはずだ。しかし、恭也に純吾の攻撃が当たらないのは先程までの対峙で十分理解しているはず。
なら、確実に攻撃を当てるにはどうするか? 奇襲をするしかない。間違いなく、この土砂は純吾の姿を隠すために起こされたものだ。純吾が起こしたと思われる強風によって勢いを得た土砂は体に当たれば確かに痛いがそれだけだ。
なら、この目くらましと共にやってくる彼のタイミングを、こちらから挑む事で崩させる!
土の荒波が薄くなったのを感じて、恭也は小太刀を思い切り振るった。薄くなった土砂を払うためであり、そして怒涛の先にいるはずの純吾と決着をつけるために。
だが、
「いないだとっ!」
横薙ぎに小太刀を振るった姿勢のまま、驚きに目を見開く。恭也が目にしたのは彼の斬撃を受けて倒れた純吾……ではなく、【なぎはらい】によって生じた大きなクレーターだけ。
と、自分の斜め後ろ上方向から、ただならぬ気配を感じた。
「……【捨て身の一撃】!」
そこにいたのは、土砂の壁の後ろにいるはずだった純吾だった。どういう理屈かいつの間にか恭也の後ろ、それも数mも上まで移動していた彼は、そこから弾丸のように恭也へと突っ込んできた。
今までのどの攻撃よりも早く、力強い攻撃に恭也は一瞬目を見開く。が、すぐ険しい顔をし、こちらも常人ではありえない速度で動き、純吾を闘牛を受け流すマタドールのように体全体で
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