第8話 守る、という事
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
めると、恭也は攻撃をやめて急いで後ろへと大きく飛び下がった。ズンっ、という重い音を立てて拳が地面へとめり込み、丁寧に整地された芝がはがしその下の土を辺りにまき散らす。
地面に突き刺さった拳を引き抜く純吾を射るように見ながら、何を思ったか恭也はこれまでの試合について自分の考えを離し始める。
「最初の奇襲は見事なものだったが、それ以降は無茶苦茶だったな。身体能力にしても力は異常だが、それ以外は俺でも十分に対処できる程度のものだ、慣れてしまえばどうという事はない」
それを純吾は見よう見まねで身に付けたボクシングの構えをとりながら聞いている。
自分の能力のバランスがいびつな事、技術が全く追いついていないことなどは純吾が一番承知している。あの地獄の下で人類を超えた存在である悪魔たちと戦い続けたといっても、それは2日間の事でしかない。【ハーモナイザー】での能力の割り振りは闘うためよりも生き残るため、生活するために便利なように振ったし、身に付けた技術はどれも付け焼刃なものばかり。
今でも奇襲によるものだが、手練れの彼に一撃でも与えられた事が奇跡にひとしいのだ。
そんな事を考えつつも、視線はそらさずに恭也を見据え続ける。すると、恭也は鋭く細めた目を僅かに微笑むように緩めた。
「だが、使えるもの全てを使い一撃見舞おうとする思考力、彼我の力量を客観的に測ろうとする判断力そして、その決して諦めようとしない闘志。
……初めは眉唾ものだったが、今は信じれる。君が本当に過酷な環境を生きてきたんだと言う事、そして今、君が抱いている覚悟が本物だと言う事も」
突然かけられた自分を認めると言う言葉に、思わず純吾は構えを解いてしまいそうになる。認めてもらったなら、もうこんな事しなくてもいいからだ。
だがそれを、恭也は自ら構えなおす事で押しとどめさせた。
「だからこそ君の本気を見せてほしい。純吾君、君は今まで本当に力を出し切ってはいないだろう? 俺が人であり、君の様な特殊な力を持っていなかったからという事で。拳の軌跡に全部出ていたぞ」
その言葉に純吾は目を見開く。確かに純吾は【ハーモナイザー】を使って常人以上の力で以て彼と対峙した。
それは目の前にいる恭也に自身の思いを認めてもらいたかったからであり、またその上で自分がここにいる為には力を見せる必要があると思ったからである。
だが、【ハーモナイザー】の力は普通の人にとって危険なものでしかない。そのため純吾はわざと恭也の持つ小太刀だけを狙って攻撃をしていたのだが、それが全て見抜かれているとは……
「信じられないって顔だな。けど俺の方が武術の経験は長い、君に出来ない事だって、俺にとっては出来る事さ。
……な、だから俺を信じてみてくれ。君の本気だって、見事受け切って
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ