第8話 守る、という事
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け。まぁ、ジュンゴは筋力の向上に能力を振り分けているから若干特例って感じはするけど」
唖然とする一同を尻目に、リリーは説明を止めて視線を階下にやった。試合を見つめつつも以前の事を思い出しているのか、呟きが口から漏れる。
「『ピクシーに傷ついてほしくない』って、素人の癖に何にも分からない時から壁役買って出て。それに『力持ちになったら物、いっぱい運べる。みんなに余裕できる』って。ほんっと周りの事は良く見えるのに自分の事考えないんだから……けどだからってあんな無茶な戦い方、私たちがどれだけ心配したと思ってるのか――」呟くごとに自分の世界に入って行ってしまったのか、目のハイライトがない状態のリリーはかなり怖い。
しかしそんな呟きもしばらくすると止んだ。正気に戻ったリリーは怪訝な表情をした顔をあげ、忍の方へと視線を向ける。
「むしろ、びっくりするのはキョーヤって忍の彼氏の方ね。
【ハーモナイザー】を起動させたジュンゴに喰いついてくるって、新手の【英雄】種族の悪魔だって言われても納得しちゃうわ」
そう、今試合は段々と恭也の方へと流れが変わっていた。純吾の渾身の一撃を受けて意識を切り替えたのか、今度は恭也が純吾へ攻撃を仕掛けていたのである。
それも漫然と攻めるのではない。手数を多くし、純吾に攻撃の隙を与えない徹底ぶりだ。
「それこそあったり前ね。恭也は私の彼氏なんだから」
それを見て若干落ち着いたのか、忍は不安げな表情を押し殺しつつ胸を張って答える。忍にとって恭也は、絶望の淵から彼女を救ってくれたヒーローであり、毎日彼が修行を続けている努力の人だと言う事を知っている。
予想外の純吾の力に驚きはしたが、それ位で彼への信頼が揺るぐはずが無い。
「ふ〜ん、信じてるって訳ね。まぁ、それを言うならジュンゴは自慢のご主人様だけどね」
ニヤッと忍に向かってリリーが笑い返す。
そこから「「ふふふ…」」と不気味にお互いに笑みを交わしあい、仲良く階下の試合を見守り始める。それはお互いがお互いの相手の事を信頼しているからこその、女の意地の張り合いだった。メイド姉妹は立て続けに起こる非常識は無視することに決めたのか、目の前の人間の動きを超えた試合を興奮した様子で見守っている。
「……純吾君」
ただすずかだけが自分を暗闇から引きずり出してくれた少年を見つめ、人知れず両手を祈るように強く握りしめていた。
怒涛の様に連続して繰り出される斬撃をどうにか体の重要な部分に当たらないようにしながら、純吾は反撃の一手を繰り出した。
「【怒りの一撃】!」
【ハーモナイザー】によって人の限界以上に強化された拳が恭也へ風切り音をあげて襲いかかる。
冷静にその自分へと繰り出される拳を認
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