第六話
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しかし実際のエルシャンが選んだ使いみちは、家族へのプレゼントまでは予想通りだったものの、残った報酬は各種香辛料や発酵調味料の購入費に充てられた。しかもフルント製のものだけではなく、他星系から輸入されている珍しい香辛料や発酵調味料なども積極的に収集し、集まったそれらと共にキッチンに篭るとそれらを使い地球の料理を再現するために没頭した。
魚醤の類はフルント星でもアルキタ族の一部が古くから使用していたものが手に入った。しかし醤油に比べても強い旨味があるが魚独特の風味が感じられて、調味料として用いるには使いどころが限定されると感じた。
大豆そのものは無かったが、地球の豆類や穀類に似た作物を発酵させた味噌や醤油に近い調味料が、第一渦状枝腕(ノルマ腕)の幾つかの星系で生産されていて、それらが和食への使用に耐えうると判断し、結構な代金を払って購入した。
また香辛料はフルント星や入手しやすい周辺星域産を集めただけでも想像を超える数が集まり、それらをミルサーで挽いては香りと味を確かめる作業に苦労した上に家族から色々と不安がられたが、唐辛子・胡椒・山椒・ナツメグ・シナモン・バニラなどのなじみのあるスパイスの代用になりうるスパイスを次々に見つけ出し、ついにはカレー粉の開発に挑むが、単純に唐辛子・ターメリック・コリアンダー・クミンの代用スパイスを用いても、それぞれとオリジナルの僅かな差異がミックスされる事でマイナスの相乗効果を生み出しカレーとは似ても似つかない味が生まれたり、新たに見つかったターメリックの代用スパイスが熱を加えると緑っぽい色に変色したり、一部のスパイスが多く摂取するとフルント人には健康被害が出たりと問題続出で難航するも、最終的に6つのスパイスを調合する事によってカレーに近いミックスパイスの完成に漕ぎ付けたのだった。
米に近い種の作物はあったものの、残念ながら元日本人の舌を満足させる──実際はフルント人の舌であり、もし前世で食べていた料理と全く同じ味の料理を食べても、今の舌では同じ味に感じられるとは限らない──物ではなく、とても主食にするのはとても無理な代物だったためカレーライスにはならなかったが、その代わりに小麦に似たコルナという作物がフルント星でも栽培されていて、それから作られたコルナ粉より地球のパンとほぼ同じ食べ物が存在するくらいなので、うどんやパスタなどの麺類にも挑戦して、何度もの失敗を繰り返しながら再現の成功に導いたのだった。
エルシャンが他のレシピの再現に挑戦し続ける一方で、レシピさえ確立してしまえば後は主婦であるユーシンの独壇場となった。確かにユーシンの作る料理は不味かったが、それは彼女が料理下手のなのではなくこの星自体の食文化の貧弱さのせいであった。そしてエルシャンが試作した料理をきっかけとして彼女の料理人としての魂が目を覚
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