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故郷は青き星
第六話
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に代わることは無い──引き受けたのだが、気持ち良さそうにクッションの上で身体を伸ばすウークに、友人が居ない寂しさを癒されていた。
 抜け毛がかなり進み、顔を覆う和毛も薄くなり以前のようなモコモコな可愛らしさは失われつつあるが、和毛の下から覗く顔も子供らしくてとても可愛いとエルシャンは思う。
「ニーニー、ベオもぉ」
「ムゥもぉ」
 エルシャンの背中を登りながら毛繕いをせがむ、こちらはまだ毛玉状態の2人の妹、ベオシカとムアリ。
「ニーニーは一人しかいないから、ちょっと待ってね」
 一生懸命自分の背中を登ろうとする動作のくすぐったさに笑いを堪えながらご機嫌で答えると、横からポアーチが「じゃあパパが」と口を挟んだ瞬間、エルシャンが鋭く振り返り睨んで威嚇すると物理的に尻尾を巻いて退散していった。まだ父を許してなかったようだ。

「誕生日おめでとう。エルシャン」
 いつも通りの優しい笑顔で息子の誕生日を祝うユーシン。
「おにーちゃんおめでとう」
 そろそろ言葉が明瞭になってきたウーク。
「にーにーおめっとう」
「たーじょーびおめっと」
 次第に語彙が増えているがまだきちんと発音できないベオシカとムアリ。『だがそれが良い!』とエルシャンのみならず両親、そして弟までも思った……困った血筋である。
「改めて誕生日おめでとうエルシャン……まだ怒ってる?」
「ママ。ウーク。ベオシカ。ムアリ。皆ありがとう」
 エルシャンは自分の誕生日を祝ってくれる家族に笑顔で応えるとともに、ポアーチを軽やかに無視した。

「今日はエルシャンの大好きなカレーを作ったのよ」
 一旦、キッチンに戻ったユーシンが大きな深皿を両手に持って戻ってきた。
 深い茶系の色をしたとろみの付いたスープに鮮やかな色合いの一口大に切られた野菜が浮かぶ見た目、そして食欲を揺さぶる刺激的なスパイスの香り。どう見てもカレーでした。
 目を輝かせ、ぶんぶんと尻尾を激しく振りながら喜びを表す弟と妹達の様子に、エルシャンは地球の料理を再現してよかったと心から思った。
 研修中といえど実戦に参加し、フルント人のベテランパイロット達をも凌ぐスコアを叩き出したエルシャンにはかなりの額の報酬が出ていた。ポアーチは「貯金するでも何かの為に使うのでも好きにしなさい」とその全てをエルシャンに渡した。得た報酬の使いみちを決めるまでがパイロットの仕事だと言うのが彼の持論だった。
 ポアーチとしては、大部分を貯金して後は家族にプレゼントといった堅実な使いみちを選択するのだろうと信頼していた。心配があるとすれば下の子供達に高価なおもちゃを与えてしまう事だが、その時に注意するのが親としての役割であり、出来れば是非とも親としての役割を果たさせて貰いたい。ここは親孝行と思ってお願いしますといった心境だった。
 
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