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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第三話 士郎危機一髪!?
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「これを、わたしに?」
「ああ、この刀は俺の故郷の武器なんだが、武器としてではなくお守りとして使われることがある」
「お守り? 剣がお守りになるのですか?」

 カトレアは刀を両手で持ち、士郎を見上げる。

「俺の故郷では、昔から剣には神秘的な力が宿ると信じられていてな、その力で降りかかる災難から身を守ろうとしていたそうだ」
「神秘的な力……それは魔法のことですか?」
「さて、それはわからないが、まあ、とにかくだ。昔から刀はお守りとして使われている。本来はそれの半分位の長さの短刀というものがお守りとして使われるんだが、その刀はちょっと特別なものでな」
「特別?」

 掲げるように目の前に持ち上げた刀を眺めるカトレアに、士郎は刀の銘を伝える。

「『大典太光世』、それがこの刀の銘だ」
「オオデンタミツヨ? 不思議な名前ですね」
「不思議か……まあ、そうだな。少し借りるぞ」

 士郎はカトレアから刀を受け取ると、柄に手を掛け一気に引き抜いた。

「わ……ぁ……綺麗……」

 抜き放った刀の刀身は、まるで濡れているかのようだ。窓から差し込む光に照らされ輝く様子は、武器というよりも芸術品。芸術品というよりも、宝石のようだった。その、あまりの美しさに見惚れるカトレアの前で、士郎は刀をゆっくりと鞘に収めた。

「この刀は武器としても芸術品としても一級品だが、それさえも霞む程の力がある」
「力? それは……もしかして」
「お守りとしての力だ」

 刀身を鞘に収めた士郎は、それをカトレアに返す。カトレアは士郎から受け取った刀を胸に抱くようにして持つと、「お守り、ですか」と呟きながら士郎を見る。

「この刀にはある逸話があってな、昔あるお姫さまが謎の病気にかかりどうしても治療することが出来なかったのだが、この刀を枕元においてみると、忽ち病気は治ったそうだ」
「病気……治る……それって」
「カトレア、騙されたと思ってそれを肌身離さず持っていろ」

 士郎の言葉に、カトレアの瞳が戸惑うように揺れている。士郎は安心させるようにカトレアの桃色がかった柔らかな髪を梳くように撫でると、目を細め優しげな笑みを向けた。

「この刀はきっとお前を守ってくれる」
「……守って、くれる」

 ぽんぽんと頭を軽く叩くと、士郎はカトレアから離れだす。しかし、数歩ほど歩くと首だけを振り向き、

「その刀が失くなると加護も受けられなくなるから絶対になくすな」

 そう忠告すると、ルイズの下へと歩き出す。
 段々と小さくなる士郎の背中に、カトレアの焦ったような声が向けられる。

「し、シロウさんっ!」
「どうした?」

 カトレアの声に士郎は立ち止まり、顔だけをカトレアに向ける。

「もしっ、もしわたしの身
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