無印編
第二十一話 裏 (すずか、アリサ、なのは)
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◇ ◇ ◇
高町なのはの世界は、昨日とは色が違った。
翔太と一緒にいる時間以外は灰色のように色あせて見えた景色が、今は眩しいぐらいに輝かしい。まるで、世界が違ったように。ああ、いや、確かに違ったのだろう。高町なのはの世界は一日で変化した。隣で寝ている蔵元翔太という唯一の友人を手にしたことで。
なのはは、眠い頭を必死にたたき起こして、隣で寝ている翔太の顔を目に焼き付ける。なのはの唯一の友人の姿を。
短い黒髪。整ってはいるが、何所にでもいそうな風貌で、あどけない表情で眠っている翔太は、なのはにとって掛け替えのない大切なものだった。彼の顔を見忘れることがないように、となのははじっと翔太の姿を目に焼き付けるように見つめる。
どのくらいの時間が経っただろうか。なのはには分からない。翔太の顔を見ることは時間を忘れていられるから。少なくとも少なくない時間が経った後、翔太はゆっくりと瞼を開けて、寝ぼけ眼で起き上がりながら、なのはを見てきた。
残念と思いながらも、なのはは、翔太におはよう、と挨拶を交わす。未だに寝ぼけているのか、翔太ははっきりとしない頭で返事を返してくれたが、やがて、頭も完全におきたのか、少し驚いたような表情をしていた。いつもはしっかりとしている翔太だが、寝起きの少し呆けた表情を見られてなのはとしては内心笑いながらも、いつもは見られない表情を見られて嬉しいかった。
それから、なのはにとって夢のような時間が始まる。
翔太と一緒に手を繋いでアースラの中を歩き、朝食を食べ、学校へ行く。これは本当に現実なのだろうか、とこっそり翔太に知られないように何度も夢ではないことを証明するために手をつねってみたのだが、そのたびになのはの手の甲には鋭い痛みが走り、これが現実だということを教えてくれた。それが嬉しくて、なのは手の甲の痛みに笑うという奇妙なことになってしまったが。
しかし、そんな夢のような時間も少しで終わりだった。教室の前、翔太となのはのクラスが違うのだから別れるのは当然のことなのだが、それでももの悲しい気分になってしまう。今までくっついていたのだから尚のこと。そんななのはの気持ちを慮ってくれたのか、一緒のクラスだったらいいのに、と零したなのはに翔太は笑いながら慰めるように口を開いた。
「えっと、なのはちゃんも頑張れば一緒のクラスになれるんじゃないかな?」
その翔太の言葉でなのはは、この学校のシステムを思い出した。上位三十名だけがなれる第一学級。翔太と一緒のクラス。運だけではない。ただの学力による力でもぎ取ることができるシステム。二年生の頃は、そのシステムの所為で第二学級に来た事実を知ってしまったなのはだったが、今はそのシステムに感謝していた。自分の努力次第では、
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